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  • アパートの消防設備点検は義務!費用や自分でできる項目は?

    アパートの消防設備点検は義務!費用や自分でできる項目は?

    アパート経営の必要経費には消防設備点検の費用が含まれ、定期的な点検が必要であると定められています。中には有資格者による点検が義務付けられている建物や設備もあります。しかし、消防設備の中にはオーナー自身で点検できるものもあります。この記事では、消防設備の種類や自分で点検する際のポイント、有資格者に依頼する際の費用などについて紹介します。

     

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    消防設備点検はアパートオーナーの義務

    消防設備点検はアパートオーナーの義務と定められていることから、設備の点検不良などによって火災事故が起こればオーナーの責任となります。

    火災が発生した際の被害の大きさは、その建物が使用される用途や規模、利用する人数の多さなどによって異なります。過去には、不特定多数の人が出入りする大規模な建物で火災が発生し、適切な防火対策がなされていなかったために大惨事が引き起こされた事件が起こったことがありました。

    そこで、消防法などでは、建物の構造・用途・規模などに応じて、消防設備の設置義務や点検義務、届出義務を定めています。これにより、有資格者による消防設備の点検が義務付けられている建物は、

  • 延べ床面積が1,000㎡以上のもの
  • 階段が建物内に1カ所しかなく、地下または3階以上の階に特定用途があるもの
  • (特定用途とは、レストランやホテルなど不特定多数の人が利用すること)
     
    となっています。有資格者とは、消防設備士または消防設備点検資格者をさします。

    また、加圧式消火器であれば製造から3年、蓄圧式消火器であれば製造から5年を超える消火器が設置されている場合には、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要となります。

    賃貸物件のオーナーには、入居者が安全に暮らせる環境を用意する義務があります。万が一命にかかわる事故が起これば、莫大な損害賠償責任を問われる可能性も生じます。適切な消防設備を備えておくことで、火災発生時に入居者に知らせたり、逃げ道を確保したりしておくことは非常に重要であるのです。

    そのため、いつ起こるか分からない災害に備えて、自分の所有する物件に必要な消防設備点検の内容や点検のポイント、費用などを把握しておくことは不可欠であることを理解した上で、以下の内容を読んでみてください。

    消防設備点検の内容とは

    消防設備点検の内容とはどのようなものなのか、具体的に説明していきます。これらの中には、点検の難易度によって有資格者しか行えないものと、有資格者ではなくても行えるものがあります。特別な資格がなくても行える点検については、以下でお伝えする確認のポイントなどを参考にしてぜひ自身で行ってみてください。

    消火器

    消火器の点検において確認すべきポイントを簡単に説明します。

  • 製造年は何年か(消火器の種類により、製造から3年または5年を超えている時には、有資格者による点検か消火器の買い替えが必要)
  • 消火器本体に変形や損傷などがないか
  • 安全栓の封がはがれていないか、変形や損傷がないか、使用済みになっていないか
  • レバー、キャップ、ノズル、指示圧力計は正常に動作するか
  •  
    詳しくは、消火器の説明書等を参考にして点検しましょう。また、上記に加えて、

  • 消火器の設置場所は適切で、すぐに使えるようになっているか?
  • 設置場所に適した種類の消火器が用意されているか?
  •  
    などについてもしっかりとチェックしてください。

    自動火災報知設備

    自動火災報知設備とは、熱や煙を感知した感知器が、建物の内部にいる者に火災の発生を自動的に知らせるための装置です。自動火災報知設備の点検において確認すべきポイントは以下の通りです。

  • ひび割れなどの損傷や変形、脱落などがないか
  • 間仕切りなどによって、感知されないエリアが生じていないか
  • 設置場所は適切か
  • テストボタンを押して感知器の作動確認を行い、「正常」というアナウンスが流れるか
  • 連動型警報機能付感知器が連動しているか
  •  
    自動火災報知設備が正常に作動しないと、火災の発生に気が付かずに逃げ遅れてしまったり、被害者が出てしてしまったりする可能性があります。間違いなく作動するか、しっかりと確認を行いましょう。

    避難器具

    避難器具とは、火災などが発生した際に、高層階から避難するための避難用はしごや滑り台、救助袋などをさします。非常時以外は使用することがないため、格納場所の周囲が物で塞がれていていざという時の使用に支障が生じる、器具が破損してしまっているということのないように定期的な点検が重要です。

    これらの避難器具の点検には専門的な知識や技術が必要となるため、有資格者による点検が必要となります。

    非常警報器具

    非常警報器具とは、火災発生時に建物内にいる人達に火災発生の事実を知らせて避難を促すための装置で、携帯用拡声器や警鐘、手動サイレンなどのことをさします。非常警報器具の点検において確認すべきポイントは以下の通りです。

  • すぐに使用できないような場所に置かれていないか
  • ほかの物に紛れ、見つけにくい状態で保管されていないか
  • 外形に変形や損傷などは生じていないか
  • 機能が正常に作動するか
  •  
    緊急時に必要となるものですので、どこに収納してあるのかを普段から確認しておくことが大切です。

    誘導標識

    誘導標識とは、火災が生じた際に避難口や避難すべき方向を知らせるための標識のことです。誘導標識の点検において確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 標識の一部が欠けているなど、損傷や汚れなどはないか
  • 設置場所は適切で、物などで視覚が遮られてはいないか
  • 標識が見えるように十分な明るさがあるか
  •  
    これらは、火災が発生した時に逃げ遅れる人が出ないよう、日ごろからもれなく点検しておく必要があります。ただし、蓄光式のものや電気エネルギーによって光を発するものなど、配線などの点検が必要な誘導灯は専門家による点検が必要なため、専門家以外の防火対象物の関係者が行うことはできません。

    連結送水管

    連結送水管とは、火災発生時に消防隊が消火活動を行うにあたって、火災が発生している階まで消化用水を送るための装置です。7階以上の高層建築物や、5階以上で延べ床面積が6,000㎡以上の広さのある建物などが設置の対象となります。マンションや商業施設などの入り口付近に設置されています。

    設置をしてから10年経過後に耐圧性能点検の実施が必要となり、それ以降は3年ごとに点検が必要となります。連結送水管の点検は専門的な知識が必要ですので、有資格者に点検を依頼する必要があります。

    消防設備点検の種類、期間について

    消防設備点検には「機器点検」と「総合点検」の2種類があります。設備点検を行ったら消防署長へ報告する必要があり、この報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすると30万円以下の罰金、または拘留に処せられることになりますので、うっかり忘れることのないように注意してください。

    機器点検

    機器点検とは、消防設備に破損や劣化などの異常はないか、設置場所に問題はないかといった、外観や簡単な操作で確認できる程度の点検となります。消防法によって、半年に一度点検を行い、点検の結果は消防署長へ報告することが義務付けられています。

    総合点検

    総合点検とは、消防設備が問題なく機能するか実際に作動させて点検するもので、通常は機器点検を行う際に同時に実施します。この点検は1年に一度行うものとされ、機器点検と同様に点検結果は原則として消防署長へ報告することが義務付けられています。

    消防設備点検を行う際に注意すべきこと

    各部屋やベランダに備え付けられている設備を点検する際には、点検を担当する者が個人の住居に立ち入らなくてはなりません。そのため、各部屋の入居者には事前に点検日を伝えて都合のよい日程を調整し、部屋で立ち合いをお願いするなど、トラブルにならないような配慮が必要です。

    また、共用部分で行う点検であっても、事前に設備点検の日程は知らせておきましょう。周知しておくことで、警報機がいきなり鳴り響くなどによって入居者が本物の火災と間違える、といったトラブルを減らせます。

    消防設備は、火災発生という非常事態の際に命を守るため大変重要な設備です。緊急時に使用が妨げられるようなものが周りに置かれていることがないよう、入居者には周知しておく必要があります。設備点検の機会にお知らせするようにし、改めて意識してもらえるように声掛けをするとよいでしょう。

     

    消防署長への報告義務に対して注意すべきこと

    消防署長への報告義務は、不特定多数の者が出入りする商業施設やホテルなどの「特定防火対象物」だと1年に1回、「非特定防火対象物」だと3年に1回と定められています。マンションなどの共同住宅は「非特定防火対象物」に該当しますので、報告義務は3年に1回となります。

    ただし、これは消防署長へ報告しなくてはならないのが3年に1回でよいとされているのであって、設備点検を行う必要があるのは年に1回、もしくは2回であることには変わりはありません。

     

    アパートなどの消防設備点検費用の目安

    消防設備点検費用は、物件の規模や設備の種類によって点検内容・点検する箇所の数が異なるため、費用には大きな開きがあります。おおよその目安について、10戸未満の物件を小規模、20~50戸未満の物件を中規模、50戸以上の物件を大規模として以下に紹介します。

    物件の規模 費用の目安/年間
    小規模 8千円~1万5千円
    中規模 2万5千円~5万円
    大規模 7万円~

     
    一般的にアパートは10戸未満であることが多いため年間費用は1万円~1万5千円ほどですが、部屋数が50戸前後の標準的なワンルームマンションタイプのケースでは、7~10万円ほどが一般的な相場となります。この他、消火器交換等の必要がある時には、その分の費用が別途発生します。

    消防設備点検は自分で行うことができる

    「消防設備点検の内容とは」の章でもお伝えしましたが、アパートやマンションなどの集合住宅の場合、建物の規模によっては消防設備士や消防設備点検資格者のような有資格者ではなく、建物の関係者が自ら点検することもできます。

    有資格者による点検が必要な建物として、

  • 延べ床面積が1,000㎡以上のもの
  • 階段が建物内に1カ所しかなく、地下または3階以上の階に特定用途があるもの
  •  
    と最初の章では説明しましたが、逆にいえば、それ以外の建物であれば有資格者以外の者でも点検できるケースがあるということです。消防設備の中でも、消火器・自動火災報知器(特定小規模施設用)・非常警報器具・誘導標識の点検は比較的簡単に行うことができ、有資格者以外の点検でも問題ありません。

    建物の規模や用途などに応じて必要となる消防設備は法律で定められていますが、物件が比較的小規模、かつ、備え付けられている消防設備が上記のものに限られているのであれば、消防設備点検はオーナーや管理者などの建物の関係者が行うことができます。

    自分で点検をしたり、消防署等への報告書を作成したりする際に利用できるアプリが用意されていますので、該当するオーナーは試してみてはいかがでしょうか?
    消防用設備等点検アプリについての詳細はこちら

    アプリを利用せずに報告書を作成して提出するのであれば、以下のサイトから報告用紙をダウンロードすることができます。
    消防用設備等の点検基準、点検要領、点検票(総務省消防庁ホームページへ飛びます)

    消防設備点検を実施した結果の報告書は、建物所在地の消防本部予防課へ提出することになっています。不明なことがあれば問い合わせて聞いてみましょう。

    また、消防設備点検を行った結果、故障などの不具合を発見した際には、できる限り早めに修繕するなどして復旧しなくてはなりません。どのように改修を行うのかについて計画を立て、報告書の備考欄にその旨を記入しましょう。

    消防設備点検は法令の定めに従いしっかりと行おう

    適切な点検を怠っていたために火災の被害が拡大するようなケースでは、オーナーの責任も問われることになりますので、消防設備点検は法令の定めに従いしっかりと行うことが大切です。違反すると罰則もあるので、定期的に点検し、3年に1回の報告を忘れないように気を付けましょう。

    アパートのような小規模な賃貸住宅ならばオーナー自身で点検を行うことも可能ですので、この記事を参考にして点検してみてはいかがでしょうか。一方、比較的大規模で、有資格者による点検が義務付けられている設備を備えているマンションのオーナーの場合には、点検のための費用をある程度予測して確保しておく必要があります。

    消防設備は、火災発生の際に入居者の命を守る大切な装置です。定期点検の時期だけに限らず、日頃から設備の状況を確認したり、周囲に関係ない物が置かれたりしてはいないか気を配ることを心がけましょう。

  • 賃貸経営のトイレリフォーム|入居者層を意識して決めよう

    賃貸経営のトイレリフォーム|入居者層を意識して決めよう

    賃貸物件のトイレは、内見者が物件を選ぶときに重要視する場所のひとつです。いくら綺麗にリフォームされた部屋でも、トイレが汚いと内見者から敬遠されてしまう可能性があります。この記事では、賃貸経営を順調に行うためにトイレリフォームを考えているオーナーに向けて、トイレのリフォーム例、費用相場などを解説していきます。

     

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    賃貸オーナーはトイレなどの水回りの印象を良くしよう

    水回りは多くの内見者が気にするポイントです。特にトイレは在宅時に何回も利用する場所のため、その部屋の入居を決める判断材料として重視する人が少なくありません。いくら部屋の内部が綺麗でも、トイレが汚ければ入居する気にはなれないものでしょう。トイレは「排せつ」というデリケートな行為をする場所ですので、居心地の良い空間にすることが必要です。

    もしも賃貸物件の入居者がなかなか決まらないという場合、トイレなどの水回りが原因になっているかもしれません。したがって、賃貸オーナーは空室率対策としてトイレなどの水回りを重要視すべきだといえます。トイレなどの水回りの印象を良くして、入居者を増やしていきましょう。

    賃貸物件のトイレリフォーム例

    賃貸物件のトイレリフォームといっても、具体的にどのような工事があるのでしょうか。本章では賃貸物件のトイレリフォーム例を紹介します。

    和式から洋式便器へ交換

    トイレリフォームの中で広く知られているのが、和式から洋式に変更する工事です。このリフォームの場合、まずは既存の便器や床などを解体して処分します。その後、配管工事や床・壁の下地工事、クロス・床材の張替えといった内装工事をして、最後に洋式便器を設置します。

    なお、和式トイレの中には床に段差がある場合があったり、温水洗浄便座付きの洋式トイレにはコンセントの設置も必要となったりします。このように、和式トイレの場合は便器の交換以外にもさまざまな工事が必要になるため、費用がやや高額となります。

    和式から洋式に変えるおもなメリットは以下の3つです。

    1.足腰に負担をかけにくくなる
    2.便器周辺が汚れにくくなる
    3.洋式トイレは使い慣れている人が多い

    和式は、しゃがむ体勢になって用を足すため、足腰が弱い人には負担がかかりますが、洋式トイレは座るタイプですので楽な体勢で利用することができます。また、和式は用を足すときにどうしても便器の周囲に排せつ物がはみ出しやすいため、まめに掃除する必要があります。その点、便器の中で用を足せる洋式ならば汚れは比較的ひどくなりにくいといえます。

    そのうえ、近年の住宅では洋式が設置されていることがかなり多いので、和式より洋式のほうが世代を問わず使い慣れていて違和感なく利用できる点もメリットです。

    洋式から節水型トイレへ交換

    洋式から洋式へのリフォームとして、節水型トイレへ交換する工事があります。旧型の洋式モデルは1回の洗浄に使用する水量が多いため、水道代が高くなる傾向です。しかし、最新式のトイレは節水型が多く提供されており、少ない水量で洗浄することができます。

    工事の内容は基本的に便器の交換となりますが、水圧の関係で工事不可というケースがあります。タンクに貯めた水を使って勢いよく水を流す旧式のトイレと違い、節水型のトイレは使用する水の量が少ないため水圧が弱めです。設置を検討する場合は、リフォーム前に専門業者に下見をしてもらい、水圧に問題がないかどうかを確認しておきましょう。

    従来の洋式トイレから節水型トイレに変えるおもなメリットは以下の3つです。

    1.水道代が節約できる
    2.掃除が楽になる
    3.節電できる

    「節水型」というだけあり、水道代が節約できるのは大きなメリットです。従来は約10~13リットルの水を使うのが一般的でしたが、最新式のモデルでは6~8リットルというように約半分の量で流せるタイプが提供されています。水道代が安くなるので入居者にとってはうれしいポイントです。

    また、掃除が楽になるという点もあります。節水型トイレは水の流れが渦巻き状のため、少ない水でもきれいに汚れを落とせるようになっています。最新機能を持つトイレだと、除菌機能つきや汚れにくい加工つきのタイプも提供されているので、従来タイプよりもトイレ掃除の回数は少なくなることが考えられます。

    そして、節水だけでなく節電ができるのもメリットです。近年の最新型トイレは使わないときに節電機能が働き、余分な電気代がかからないモデルが主流となっています。月々はわずかでも年間だとある程度の金額になるので、ランニングコストが安くなる点は入居者にとっても良い点だといえます。

    便器交換を含めたフルリフォーム

    トイレのリフォーム工事には、便器の交換だけでなく、クロスや床の張替えといった内装を一新するフルリフォームもあります。内装も変えることで、見違えるように綺麗なトイレ空間を実現することができます。また、手洗いカウンターや手すりを付けて、トイレの利便性を向上させるのも良い方法です。特に高齢者を対象とする賃貸物件の場合は、体を支えるための手すりがあると転倒防止にもつながり重宝します。

    トイレをフルリフォームすることによるメリットは以下の3つです。

    1.新しく清潔なトイレ空間に生まれ変わる
    2.嫌な臭いがなくなる
    3.トイレ内の雰囲気に違和感がない

    トイレは毎日使う場所ですので、不衛生で暗い雰囲気だと、使うたびに不快な気持ちになってしまう人もいるでしょう。排せつというデリケートな行為をする場所だからこそ、明るく清潔な空間であれば、快適に利用できるようになります。

    また、トイレの嫌な臭いはクロスや床に染み込んでいることが多いため、新しいものに張替えると臭いの解消につながります。近年のクロスは消臭効果があるので、クリーンな空気を持続できるようになります。

    築年数が経過している賃貸物件の場合は、便器と同様にクロスや床なども劣化しているものです。そのため、便器を交換するだけでは内装が古いままとなってしまい、トイレ内の雰囲気に統一性が見られなくなってしまう可能性があります。フルリフォームならば、便器・クロス・床などが一新されるため、トイレ空間を新しく生まれ変わらせることが可能です。

    トイレのドアを交換

    古くなったトイレのドアを新しく交換すると、部屋の雰囲気を明るくすることができます。新しいタイプのドアはデザインが豊富で見た目にもおしゃれなものが多く、気密性が高いので、音漏れや臭い漏れを防げるのがメリットです。

    トイレに設置するドアの種類は、大きく分けると「開き戸」「引き戸」「中折れ戸」の3タイプがあります。賃貸物件で一番多いのは開き戸です。外開きにする場合はスペースが必要ですので、外部のスペースを確保することが必要です。一方、中開きにすると外に出るときにトイレ内のスペースが狭くなるという点があります。

    高齢者向けのトイレには引き戸が向いています。体を動かさずに開閉でき、開けたドアも邪魔にならないので出入りするのが簡単です。近年では力を入れずに開閉できる引き戸が提供されています。また、間取りが狭い物件の場合は、中折れ戸も向いています。開閉したときのスペースが開き戸ほど多く取らず、引き戸のようにドアを収納するスペースも必要ないからです。

    賃貸物件のトイレリフォームは入居者層を意識するのがポイント

    トイレのリフォームをするときは、賃貸物件の入居者層に合った内容で施工することが重要です。たとえば、所有物件のターゲット層は一人暮らしなのか・ファミリーなのか、また、年代は若いのか・高齢者であるのかなどにより違いがあります。賃貸物件の立地や土地柄、どのような人が入居者で多いのかによってリフォーム内容を決めていくようにしましょう。

    具体的な例を挙げると、都心にある一人暮らし用の賃貸ワンルームマンションの場合、トイレはコンパクトな間取りで十分です。高齢者向けの場合は介護を見据えてある程度の広さが必要だと考えられ、体を支えられる丈夫な手すりを設置することも必要です。ターゲット層と合わないのに過剰にリフォームすることは余計なコストになるため注意しましょう。

    トイレは毎日利用する場所であるため、賃貸物件の場合、入居者が常に快適に使えるようになると長く住み続けてくれる可能性が高まります。

    トイレリフォームにかかる費用、工事期間について

    トイレリフォームにかかる費用や工事期間について紹介します。それぞれをまとめた表が以下の通りです。設置する便器のグレードにより工事費用には違いがあります。

    施工内容 工事費用 工事期間
    和式から洋式便器へ交換 15~60万円 2~3日
    洋式から節水型トイレへ交換 15~30万円 1日
    便器交換を含めたフルリフォーム 20~50万円 1~2日
    トイレのドアを交換 4~20万円 1日
    手すりの設置 3~10万円 半日
    手洗いカウンターの設置 10~50万円 1~3日
    壁紙交換 3~5万円 1~2日
    床材の交換 1~6万円 1~2日
    和風改造用便器 6~13万円 1日

     
    トイレリフォームには補助金が出る場合がありますが、補助金の条件は自治体によりさまざまで、自らが住むための居住用物件でないならば補助金はゼロというケースも多いです。ただし、介護保険に関しては賃貸物件でも利用できる場合があります。次章で詳しく解説していきます。

    介護保険は賃貸物件でも利用できる

    意外に知られていませんが、公的介護保険制度は賃貸住宅でも利用することができます。基本的には自分が所有する住宅であることが要件ですが、一定の条件の下であれば、賃貸物件でも介護保険を利用した住宅のリフォームができる場合があります。そのため、ケースに応じて自治体に相談することをおすすめします。この場合、介護保険を利用する人は入居者となり、オーナーが許可したうえで介護保険を利用した住宅の改修が可能です。

    介護保険で改修できる工事には以下のようなものがあげられます。

    1.手すりの取付け
    2.段差の解消
    3.引き戸等への扉の取替え
    4.洋式便器等への便器の取替え

    したがって、トイレのリフォームに関しては上記4点のすべてが該当します。

    支援される金額は要支援、要介護を問わずに定額で20万円となり、支給限度基準額20万円の9割である18万円が上限となります。高齢の入居者がいる場合には、介護保険を利用して入居者が住みやすい環境をつくるのも良い方法だといえます。

    賃貸物件のトイレリフォームをスムーズに進めるには

    賃貸物件のトイレをリフォームする際には、リフォームに掛けられる費用の収支をシミュレーションしておくことが必要です。トイレのリフォームは、設置する便器のグレードや内装のオプションなどによって、かなり金額に開きが出ます。あらかじめ予算を決めておいて、その範囲内で収まるように便器などを選びましょう。

    もしも予算がオーバーするならば、リフォーム内容に合わせてオーナー自身でDIYできないか検討してみるのも良い方法でしょう。それに加え、リフォーム業者はたくさんありますので、必ず相見積もりをとるようにすることも重要なポイントです。

    また、上でも説明しましたが、ターゲット層を考えてどこをリフォームするか検討しておくことも大切です。たとえば、一人暮らしの会社員や学生などがターゲット層の場合は掃除しやすい節水タイプのタンクレストイレを設置するなど、入居者のライフスタイルを考えてリフォームするようにします。高齢者の場合はトイレ内に手すりを付ける、床の段差をなくすなど、安全性を高めるリフォームが適しています。

    なお、トイレをリフォームして部屋の居住環境が良くなったために、家賃を値上げしたいと考える場合があります。このようなときは、必ず周辺の家賃相場を良く調べてから実行するようにしましょう。いくらトイレを綺麗にして居心地の良い部屋になったとしても、あまりにも周辺の家賃相場よりも高い場合は入居者が入りにくくなります。トイレ空間が快適ならば入居者の満足度が高まり、長く入居してくれる可能性があるので、トータル的に考えて家賃を設定するようにします。

    賃貸物件の空室対策にはトイレリフォームが効果的

    入居者が入居を決めるポイントとして、「水回りの空間」がいかに快適であるかが大きいといえます。中でも、トイレは排せつというデリケートな行為をする場所なので、入居者が気持ちよく使える空間が必要です。トイレのリフォームはキッチンやバスルームほど高額なコストがかかりませんので、比較的リフォームしやすいといえます。ぜひ賃貸物件の空室対策として、トイレのリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。

    ◆賃貸物件のキッチンリフォームについては、こちらの記事をご覧ください。
    大家向け|賃貸キッチンリフォームを予算別・種類別に紹介

     

  • 所有権移転登記|費用と必要書類、自分で行う流れを解説!

    所有権移転登記|費用と必要書類、自分で行う流れを解説!

    所有権移転登記は、不動産の所有権が自分にあることを第三者に証明する時に必要となる大変重要なものです。司法書士に依頼することもできますが、自分で手続きをすることで費用を抑えることができます。ここでは、所有権移転登記にかかる費用と必要書類、さらに自分で登記を行う流れを解説します。

     

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    「所有権移転登記」とは?

    所有権移転登記とは、売買や相続など、何らかの原因で不動産の所有権が移転した時に、取引の関係者以外の人に対して誰が所有者なのかを明らかにするために行われる手続きです。

    不動産の登記には、「表示の登記」と「所有権移転登記」があります。

    表示の登記とは、新しく建物を建てた場合など、まだ登記がされていない不動産に対してはじめて行う登記のことで、これによってどこにどのような不動産があるかが公に分かることになります。表示の登記は建物完成後1カ月以内、または所有権を取得した日から1カ月以内に申請しなくてはならない定めがあり、反すると罰則が科されます。

    これに対して、所有権移転登記には原則として申請期限は設けられていませんし、登記自体は必ずしも所有権移転の要件ではないので、不動産の所有権を取得しても登記する・しないは自由です。ただし、不動産の登記を備えていないと、先に登記をした者に所有権を主張できないなど大きな不利益を被る可能性がありますので、所有権を取得すると同時に登記することが一般的です。

    所有権移転登記はどのようなときに必要?

    不動産の所有権が移転するのは、売買契約や贈与を行うなどといった「当事者同士の意思が合致した時」とされるのが民法の原則です。売買の場合であれば、売買契約の成立によって所有権は移転することになります。

    しかし、不動産の正式な所有者が誰であるのかは、外形からでは判断できません。そこで、不動産の取引の安全のために登記制度が設けられ、不動産の所有者が取引の当事者以外の第三者に自分の所有権を主張するには登記を備えなくてはならない、とされているのです。

    では、このような所有権移転登記が必要とされるのは、具体的にはどのようなケースなのでしょうか?売買や相続、贈与、離婚による財産分与など、代表的なケースで解説していきましょう。

    不動産を売却した場合、購入した場合

    先ほど説明したように、不動産を購入する場合は、売買契約が成立すれば買主は契約で定めた日に所有権を取得することができます。契約の当事者である売主に対して、買主は登記がなくても有効に所有権を主張することが可能となります。

    しかし、買主が登記を備えない間に、不動産の売主が他の人にこの不動産を二重に売り渡してしまうという恐れがあります。この場合、後から譲り受けた人が先に登記を備えてしまうと、先に購入した人は登記を備えた譲受人に対して所有権を主張できなくなってしまうのです。

    不動産の売買ではこのようなリスクを避けるために、ほとんどの場合、代金の支払いと所有権移転の登記は同時に行われることが一般的となっています。

    ◆マンション経営には、本記事のテーマである登記のほか、いくつかの初期費用がかかります。こちらの記事ではマンション経営の初期費用について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
    マンション経営の初期費用|シミュレーションと抑えるコツ

    不動産を相続した場合

    不動産を相続した場合は、所有権移転登記を行うことで、誰が不動産の所有者となったのかを明らかにする必要があります。

    今までは相続による所有権移転登記は原則として任意とされていたため、相続が発生しても登記がなされないまま放置されているケースが多くみられていました。その結果、相続発生後に登記をしないまま長期間が経過してしまい、相続関係が複雑になり、誰が所有者なのか分からない「所有者不明」の土地が増加して社会問題となっていました。

    そこで、2021年に民法をはじめとした法律改正が行われ、相続により不動産の所有権を取得した場合には、2024年4月1日以降は登記が義務付けられることになりました。詳しくは法務省の「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」をご覧ください。

    参考:法務省 – 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

    不動産を贈与された場合

    不動産の贈与を行う場合、特に決まった形式があるわけではないので、「あげましょう」「もらいます」というように当事者同士の意思が合致すれば贈与は成立します。しかし、このような口約束だけで成立した贈与は「書面によらない贈与」と呼ばれ、当事者の一方から撤回することができます。

    これを防ぐには、贈与についての契約書を作成して書面を残すか、不動産であれば所有権移転の登記をする必要があります。「書面によらない贈与」も履行が終わった部分は撤回できないとされているのですが、所有権移転の登記をすることで、贈与契約の履行が済んだものとみなされるからです。

    また、売買契約の時と同様に、受贈者が登記を備えないでいるうちに贈与者が他の人に売却するなどし、その人が先に登記を備えると、不動産は登記を備えた人のものになってしまいます。このようなトラブルを避けるためにも、不動産を贈与された場合にはきちんと所有権移転の登記をすることをおすすめします。

    離婚により財産分与する場合

    所有権移転の登記には不動産の譲渡人の協力が必要となりますが、離婚による財産分与で不動産の所有権を譲り受ける場合、離婚した後に移転登記を申請することになります。

    離婚した後でも相手方が誠実な対応をしてくれることを信じたいものですが、現実としてなかなか難しいケースもあります。このような場合に備えて、離婚届を提出する前の段階から登記手続きに必要な書類を準備しておくなど、慎重に進める必要があります。

    所有権移転登記を行う方法

    所有権移転登記の申請手続きは、司法書士へ代行依頼する方法が一般的ですが、自分でも行うことができます。自分で手続きを行う場合には、2つ後の章で詳しく紹介する費用のうち、司法書士への報酬は発生しません。多少手間がかかりますが、時間に余裕があれば以下の手順で手続きをしてみてください。

    登記の申請方法には「書面による方法」と「オンラインによる方法 」の2つがありますが、ここでは「書面による方法」の申請の仕方を解説します。

    ステップ1:申請書を作成する

    まず、申請書を作成することからはじめましょう。「不動産登記の申請書様式について」という法務局のサイトがありますので、そこに記載されている「登記申請書の様式及び記載例」の中から、該当する登記の申請書をダウンロードします。そこに記載されている記載例にしたがって、申請書に必要事項を記入していきます。

    参考:法務局 – 不動産登記の申請書様式について

    ステップ2:必要書類を集める

    次に、申請書に添付する必要書類を集めます。登記の種類やそれぞれの状況によって必要となる書類は異なります。次章の「所有権移転登記の必要書類一覧」の内容を参考にして、過不足のないように揃えていきましょう。

    ステップ3:法務局へ提出する

    必要な書類が揃ったら、申請書とともに対象の不動産を管轄する法務局へ提出しましょう。管轄する法務局が不明の場合には、以下を参照してください。

    参考:法務局 – 管轄のご案内

    申請書を受け付けると、法務局の職員が申請内容や添付書類について審査を行います。不備があれば職員の指示に従い補正が必要となります。

    ステップ4:登記識別情報通知書を受け取る

    登記手続きがが完了すると、登記完了証と登記識別情報通知書を受領することができます。登記完了証は、登記が完了したことを知らせる通知であり、特に何らかの法律的効果を発生させるものではありません。一方、登記識別情報通知書は、従来の登記済権利証に代わる非常に重要なものとなります。受領後は十分に気を付けて保管しましょう。

    これらを受領する方法には、窓口で受け取る方法と郵送で受け取る方法があります。

    窓口で直接受け取るには、

  • 登記申請時に付与された受付番号
  • 身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 登記申請書に捺印した印鑑
  •  
    が必要ですので、忘れずに持参してください。

    【注意!】
    登記完了までの日数は、申請する登記の種類や法務局の混雑の程度によって3日から2週間などと開きがあるので、事前に窓口へ確認してから受け取りに行くとよいでしょう。

     
    登記完了証を郵送等で受領するには、登記申請書に「送付の方法により登記完了証の交付を希望する」旨と、送付先の住所などの必要事項を記載し、郵便切手を提出します。原則として書留郵便等での郵送となりますが、費用を負担すれば速達や本人限定受取郵便での郵送もしてもらえます。

    登記識別情報通知書も郵送を希望する場合には、登記完了証と同様に登記申請書にその旨の記載をすれば郵送での交付が可能ですが、この場合には本人限定受取郵便での受け取りとなりますので、その分の切手代の負担が必要です。

    【注意!】
    登記識別情報通知書は、登記の完了から3カ月経過すると破棄されてしまいますので、期限内に受け取るように気を付けてください。

    所有権移転登記の必要書類等一覧

    所有権移転登記は、売買・贈与・相続・財産分与のそれぞれで必要書類が異なるうえ、司法書士に依頼する場合は司法書士への委任状も必要になるなど、複数の書類を揃えなくてはなりません。さらに、必要となる書類の種類やケースによって、当事者全員の分を用意しなければならない場合や、当事者のどちらかのものを用意する場合もあります。

    まずは必要書類について分かりやすいように一覧にまとめたものを記載し、続く章でそれぞれの書類についての詳しい説明を行いますので、ぜひご確認ください。

    【全てのケースで必要な書類(以下①の1-1~1-5で解説)】

    司法書士への委任状
    (司法書士に委任する場合 ※1)
    全員の分
    登記済権利証または登記識別情報 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    印鑑証明書(※2)および実印 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    固定資産評価証明書 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    身分証明書 全員の分
    新たに所有者となる者の住民票の写し 新たに所有者となる者の分
    (現住所が登記簿の記載と異なる場合、全員の分)

     
    ※1 所有権移転登記の手続きを司法書士に委任する場合には、司法書士への委任状が必要となります。司法書士が作成した委任状に、関係者がそれぞれ署名、押印して手続きの代理を委任します。

    ※2 相続のケースでは、遺言書や法定相続分にしたがって登記する場合には、印鑑証明書は不要となります。

    【ケースごとに必要となる書類(登記原因証明情報)】

    売買のケース……(以下②で解説 売買契約書等
    贈与のケース……(以下③で解説 贈与契約書等
    協議離婚のケース……(以下④の1-1で解説 離婚協議書
    + 離婚の記載のある戸籍謄本
    裁判上の離婚のケース……(以下④の1-2で解説 調停調書、審判書、和解調書等
    + 離婚の記載のある戸籍謄本
    相続:遺言のあるケース……(以下⑥で解説 公正証書遺言もしくは自筆証書遺言など遺言書
    (自筆証書遺言の場合には検認調書も必要)
    相続:相続人間の協議によるケース……(以下⑦で解説 遺産分割協議書
    相続:調停または審判によるケース……(以下⑧で解説 調停や審判の調書

     
    【相続のケースに必要なその他の書類】

    被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)……(以下⑤の1-1で解説 被相続人の分
    被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票……(以下⑤の1-2で解説 被相続人の分
    戸籍謄本(抄本) ……(以下⑤の1-3で解説 相続人全員
    相続関係説明図……(以下⑤の1-4で解説

    ➀全てのケースで必要となる書類

    全てのケースで必要となる書類は複数ありますので、それぞれについての詳しい説明をします。

    1-1.登記済権利証または登記識別情報

    登記済権利証とは、不動産の正式な所有者として登記されていることを証明する書類です。2005年以降は登記識別情報という制度が導入され、登記済権利証に代わる機能を果たしています。

    登記識別情報とは、不動産及び登記の名義人ごとに定められた12桁の符号で、登記識別情報制度が導入された後に登記した所有者に届く「登記識別情報通知書」に記載されています。登記識別情報は大変重要な情報ですので、「登記識別情報通知書」に目隠しシールを貼って交付されます。

    これらは不動産の所有者として登記されていることを証明し、登記された所有者が保管するものであり、売買や贈与、財産分与などの所有権移転の登記の際に必要となります(相続の場合には原則として必要ありません)。

    【紛失してしまったら!】
    登記済権利証や登記識別情報を紛失してしまった場合、再発行はできませんが、「事前通知制度」や「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」などで、本人確認を行うことができます。

    「事前通知制度」とは、名義変更のための登記に先立って、法務局が登記義務者に対して通知をして意思を確認する制度で、本人限定受取郵便で通知がなされます。「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」とは、司法書士などが「本人確認情報」を提供する方法のことで、その他に公証人が認証する方法もあります。

    1-2.印鑑証明書および実印

    印鑑証明書とは、実印が印鑑登録されていることを示す証明書です。印鑑登録とは、自分の印鑑を役所に登録することで、自分の印鑑であることの正式な証明をできるようにするためのものです。また、実印とは印鑑登録された印鑑のことを指します。重要な取引の際には実印を押印し、印鑑登録された印鑑であることを証明するために印鑑証明書を添付することで、本人確認を行います。

    印鑑証明書の添付が求められるのは、虚偽の登記申請を防止するためです。印鑑証明書で証明された実印を押すことで、

  • 真正な実印であること
  • 登記の申請人が本人であること
  • 申請者の意思で登記すること
  •  
    が証明されることになります。

    売買や贈与、財産分与などによる所有権移転の登記では、所有権を手放す側が登記申請書類もしくは司法書士への委任状(司法書士に委任する場合)に実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。これは、所有権が移転することで不利益を受ける側の意思の確認が重要となるからです。

    相続による所有権移転の登記では、遺言書や法定相続分にしたがって登記する場合には、印鑑証明書は不要となります。しかし、法定相続分とは異なる割合で相続する場合には、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名、押印しなくてはならないので、印鑑証明書の添付も必要です。

    【注意!その1】
    登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が一致していないと登記の申請は受理されないため、登記後の住所が変わっている場合には、住所が移転したことを証明できる住民票の添付が必要になります。

     

    【注意!その2】
    遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には、特に有効期限は定められていません。しかし、売買や贈与、財産分与などによる所有権移転の登記の際に添付する印鑑証明書は、発行後3カ月以内という期限があるので注意が必要です。

     
    印鑑証明書を発行するには、役所で印鑑登録の手続きを済ませている必要があります。すでに印鑑登録の手続きをしてあるのであれば、印鑑登録証と本人確認書類を持参すれば役所で交付してもらえます。また、マイナンバーカードを持っている人ならばコンビニで取得することもできます。

    1-3.固定資産評価証明書

    固定資産評価証明書とは、固定資産の評価額が記載された証明書で、原則として対象となる不動産の所在地の役所で交付されます。東京23区内の場合、申請は都税事務所で行うことになりますが、この場合にはどこの都税事務所でも手に入れることができます。

    所有権移転登記の際には「登録免許税」を納めなくてはなりませんが、この登録免許税の算定の基準となるのが「固定資産の評価額」です。また、固定資産評価証明書を申請できるのは、原則として固定資産税の納税義務者や相続人などとなり、委任状があればこれらの代理人が取得することもできます。

    1-4.身分証明書

    所有権移転登記の手続き自体に必要となる書類ではありませんが、司法書士に依頼する場合には本人確認のために必要となります。マイナンバーカードや運転免許証などといった顔写真付きのものが原則となります。

    1-5.新たに所有者となる者の住民票の写し

    所有権移転登記をするには、新たに所有者となる者の住所を記載しなくてはならないので、買主の住民票の写しが必要となります。一方、売主の住所は現所有者として登記に記載されているはずなので、売主の住所が変わっていないのであれば、売主の住民票は必要ありません。

    しかし、登記後に引っ越しをして住所変更の登記をしていない場合には、その事実も登記に反映する必要がありますので、その場合には売主の住民票も必要となります。

    ただし、住民票では直前の住所までしか確認することができないため、売主が複数回転居している場合には、その経過を確認するために戸籍の附票も必要になります。戸籍の附表は本籍地の市区町村の役所で申請します。本籍地が遠方にあるなど、足を運ぶのが負担であれば、郵送によって取得することも可能です。

    住民票は現住所の管轄となる役所で入手できますが、マイナンバーカードを作成していればコンビニで取得することもできます。

    【注意!その1】
    所有権移転登記の際に添付が必要となっている書類は、原則として原本を提出する必要があります。たとえば、「住民票の写し」となっている場合には、住民票のコピーではなく、「住民票の写し」という証明書の原本を添付しなくてはなりません。

    もし原本を保管しておきたい書類があれば、一定の書類の原本を返還請求することはできます。この場合には返還を希望する書類をコピーし、そこに「原本に相違ありません」と記載して、署名・押印したものを原本と一緒に提出すればよいことになっています。ただし、中には返還されない書類もありますので、詳しくは登記所に確認してみるとよいでしょう。

     

    【注意!その2】
    不動産登記の際に添付する住民票の写しには、個人番号の記載のあるものは利用できません。住民票の写しの交付を申請する際には注意してください。

     

    ②売買のケース

    売買のケースによる所有権移転登記の場合、「登記原因証明情報」の提出が必要となります。登記原因証明情報とは、登記の原因となる所有権移転があったことを証明するために作成されるもので、売買のケースでは売買契約書等が該当します。特約で「代金支払時に所有権が移転する」とされているケースでは、売買代金の領収証や売主によって作成された代金を受領した旨の証明書などが含まれます。

    売買契約書がないという場合には、法務局の記載例にならって「登記原因証明情報」を作成する必要があります。司法書士に依頼するのであれば司法書士が作成しますが、自分で申請する場合には法務局のこちらのページの書式を参考にしてください。

    参考:法務局 – 不動産を売買した場合の申請書の様式・記載例(オンライン庁)

    ③贈与のケース

    贈与を原因とする所有権移転登記にも登記原因証明情報が必要となり、贈与契約書などがこれにあたります。贈与契約書とは、贈与をする場合に、財産を譲る側と譲られる側で贈与の内容について後日争いが起きないように残す書面です。ただし、契約書の作成自体は贈与の要件ではありません。

    贈与自体は、当事者同士の意思表示のみで有効に成立します。ですから、贈与契約書の作成にあたって法定の書式などはありませんが、

  • 贈与契約の当事者の氏名
  • 贈与の目的となる不動産を特定できる情報
  • 贈与契約の効力の発生の日付
  •  
    を明確に記載する必要があります。贈与契約書または登記原因証明情報作成にあたっては、法務局のこちらのページを参考にしてください。

    参考:法務局 – 不動産を贈与した場合の申請書の様式・記載例(オンライン庁)

    ④離婚における財産分与のケース

    離婚における財産分与には、協議離婚のケースと裁判上の離婚のケースがあります。それぞれで登記原因証明情報は異なりますので、以下に説明します。

    1-1.離婚協議書:協議離婚のケース

    財産分与における登記原因証明情報は財産分与協議書等となりますが、離婚におけるケースでは「離婚協議書」などがそれに該当します。

    離婚協議書とは、離婚に伴う財産分与その他について、後日紛争を避けるために文書化しておくものです。贈与契約書などと同様で、必ずしも作成が義務となっているわけではないので、書式が決まっているものではありません。

    離婚協議書がない場合には、登記原因証明情報を作成することになります。法務局のこちらのページを参考にしてください。

    参考:法務局 – 不動産を贈与した場合の申請書の様式・記載例(オンライン庁)

    1-2.調停調書、審判書、和解調書等:裁判上の離婚のケース

    調停や審判、訴訟など、裁判による離婚のケースでは、調停調書や審判書、和解調書等が登記原因証明情報となります。

    この場合、これらの書類に、不動産の譲渡について書類作成日付けで「財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」旨の記載がある時には、財産を譲られる側が単独で登記の申請をすることができます。それ以外の場合には、譲る側と譲られる側が協力して申請する必要があります。

    (上記1-1、1-2共通)戸籍謄本:離婚の記載のあるもの

    離婚協議書等は通常、離婚の前に作成されますが、離婚によって財産が移転するのは離婚届を提出した日となります。それなので、離婚が成立した日付のある戸籍謄本を見て、離婚の日付を確認することが必要です。離婚した当事者のどちらか一方が本籍地の役所で申請して入手してください。

    なお、離婚成立後に財産分与協議書を作成して財産分与するケースでは、戸籍謄本は必要ありません。

    ⑤相続による所有権の移転のケース

    相続によって所有権が移転するケースでは、法定相続分の割合で相続するケース、遺言のあるケース、相続人間の協議によるケース、調停または審判によるケースの主に4つに分かれます。法定相続分の割合で登記する場合、登記原因証明情報にあたる書類は不要となりますが、その他の場合にはケースごとに必要となる書類が異なりますので、ケースに分けて以下に説明します。

    相続を原因とする所有権移転登記は、相続人となる人一方のみで申請ができることになっています。そのため、手続きに不備や不正がないか厳しくチェックできるように、添付書類が細かく定められています。

    1-1.被相続人の戸籍謄本:出生から死亡まで連続したもの

    相続手続きには、被相続人の戸籍謄本が必要です。被相続人が出生した時から死亡する時までの連続したものすべてを取り寄せなくてはなりません。被相続人が出生した時からのすべての戸籍をさかのぼるのは、直近の戸籍を調べただけでは分からない隠れた相続人がいないかを確認するためです。

    1-2.被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票

    戸籍謄抄本には、本籍地の記載があるのみで住所の記載がありません。戸籍に記載されている人と登記簿に記載されている人が同一人物であるのかを確認するためには、被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票と、登記簿の住所が一致していることを証明する必要があります。

    住民票の除票とは、転出や死亡などによって除かれた住民票をいいます。これによって、以前そこに住んでいた事実やそこに住民票を移す前後の住所、本人がすでに死亡しているという事実が分かります。

    戸籍の附票とは、戸籍の原本と共に保管され、戸籍が作られた時以降の住所が記録されているものです。複数回転居している場合にも、戸籍の附票を取ることで、その過程を調べることができます。もっとも、本籍の変更をしている場合には、現在の戸籍の附票には変更前の住所の記録はされていませんので、それ以前の住所を調べるには転籍前の戸籍の除附票をとらなくてはなりません。

    【注意!】
    住民票の除票を取り寄せる際には、本籍地の記載のあるものとしてください。

     

    1-3.相続人全員の戸籍謄本(抄本)

    相続人全員の戸籍謄本や抄本によって、相続人が相続発生時に生存していたことを証明する必要があります。ですから、被相続人が亡くなって相続が発生した後に交付されたものでなくてはなりません。この際には不動産を相続しない相続人の分の戸籍抄本等も必要ですが、被相続人と同一の戸籍に入っていた場合には情報が確認できるため、新たに揃える必要はありません。    

    1-4.相続関係説明図

    被相続人と相続人がどのような関係であるのかを一覧できるように図で示したものを、相続関係説明図といいます。相続関係説明図の作成にあたっては書式が法定されているわけではありませんが、法務局のサイトに「様式及び記載例」が掲載されていますので参照してみてください。

    参考:法務局 – 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

    ⑥公正証書遺言もしくは自筆証書遺言:遺言のあるケース

    遺言のあるケースでは、遺言書が登記原因証明情報となります。遺言には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」という2つの方法があります。

    公正証書遺言とは、遺言を残したい人が口頭で伝えた遺言の内容を公証人に伝え、それを基に公証人が作成するもので、原本の管理も公証人が行います。遺言書の内容に不備が発生したり、内容を改ざんされたりする恐れがないため、家庭裁判所の検認がなくても相続手続きを進めることができます。

    一方の自筆証書遺言とは、被相続人が自分で作成した遺言書を指します。そのため、遺言書としての民法上の要件を満たしているか、裁判所の検認を受ける必要があります。この場合には、この検認調書と遺言書を登記原因証明情報とし、登記の手続きを進めることになります。

    ⑦遺産分割協議書:相続人間の協議によるケース

    特に遺言書等がないケースで、法定相続分とは異なる割合で遺産を相続する場合には、相続人全員で協議して相続する財産の割合を決めなくてはなりません。この協議の結果によって作成されるのが「遺産分割協議書」です。特に法定の書式はありませんが、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。これにより、相続人全員が合意したという証明になります。

    遺産分割協議に基づいて所有権移転登記をする場合には、この遺産分割協議書が登記原因証明情報となります。

    ⑧調停や審判の調書:調停または審判によるケース

    遺産相続について相続人間で争いがある場合には、調停や審判によって遺産分割を行います。調停とは、裁判官や調停員が間に入って、遺産分割についての協議を行う方法です。審判とは、調停によって解決しなかった場合に、裁判所がそれぞれの主張や事情を中立な立場で考慮して遺産分割の判断をする方法です。

    調停や審判によって遺産分割を行う場合には、家庭裁判所が作成した「調停調書」や「審判書」が登記原因証明情報となります。

    所有権移転登記の費用について

    所有権移転登記を備えるには、登録免許税のほか、印鑑証明書や戸籍謄抄本などの書類を揃えるための手数料、司法書士へ依頼する場合の報酬などがかかります。なお、司法書士への報酬は、自分で登記の申請を行う場合には発生しません。

    登録免許税

    所有権移転登記の申請をするには登録免許税の納付が必要となり、この登録免許税は固定資産の評価額を基に算定されます。登録免許税算定の基礎となる固定資産の評価額は、不動産の所在地の役所で交付される「固定資産評価証明書」に記載されています。

    固定資産の評価額に「登記の種類ごとに定められた税率」を掛けて、登録免許税を計算します。税率は以下のようになります。

    登記の種類 登録免許税の税率
    売買による所有権移転登記 2%(※1、※2)
    相続による所有権移転登記 0.4%(※3)
    贈与・財産分与による所有権移転登記 2%

     
    ※1 売買による土地の所有権移転登記を2025年3月31日までにする場合には、登録免許税の税率は2%から1.5%へ軽減されます。

    ※2 売買による建物の所有権移転登記において、自己が居住するための建物を2024年3月31日までに取得した場合には、2%から0.3%へ軽減されます。

    ※3 土地の所有権を相続によって取得した人が、相続登記をする前に死亡した場合には、死亡した相続人への所有権移転登記にかかる登録免許税は2025年3月31日まで免除されます。

    手数料、書類を揃える費用など

    印鑑証明書や戸籍謄抄本、住民票の写しなど、公的な書類を役所などで揃えるには手数料がかかります。手数料の額は、申請する書類の種類や申請先の役所によって異なりますが、1通につき300~750円ほどが多いです。印鑑登録証明書や住民票の写しなど、一部コンビニで交付を受けられる書類もありますが、この場合には役所で交付してもらうよりも若干安くなります。

    相続による所有権移転の場合などは必要書類が多くなるなど、ケースによって必要となる書類の枚数には差がありますが、大体5,000円前後と考えればよいでしょう。

    司法書士への報酬

    司法書士に依頼して手続きを進めるのであれば、司法書士への報酬が発生します。司法書士への報酬は、依頼する司法書士事務所や登記の種類などによって異なりますが、大体5万円~10万円ほどが一般的です。

    不動産の購入にあたりローンを利用する場合には抵当権の設定登記も必要となったり、遺産分割協議書や離婚協議書の作成などが必要となるケースでは更に必要な処理が増えたりますので、費用は上記よりも多少増えます。

    リスクを避けるために所有権移転登記はしっかり行いましょう

    所有権移転登記を備えることで、不動産の所有権が自分にあることを第三者に証明することが可能となり、さまざまなリスクを避けることができるようになります。それなので、不動産を取得した際にはできる限り早急に登記を備えることをおすすめします。

    また、登記の申請には不動産の価格に応じた登録免許税などの費用がかかり、たとえば3,000万円の物件を売買によって取得した場合には、登録免許税だけでも60万円ほどとなります。それ以外にかかる費用を少しでも抑える方法として考えられるのは、自分で登記の申請手続きを行い、司法書士に依頼するための手数料を節約することです。

    手続きには数種類の添付書類を揃えたり、複雑な書類の作成をしたりしなくてはなりませんが、費用を少しでも抑えたい人はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

  • 建築基準法違反物件|5つの実例とリスク、調べる方法とは

    建築基準法違反物件|5つの実例とリスク、調べる方法とは

    建物に関する法律として知られる「建築基準法」ですが、建築基準法とはどのような法律で、建築基準法違反の物件を取得すると不動産投資を行ううえでどのようなリスクがあるのでしょうか?最低限必要な知識を身に付けることによって不動産投資の成功の確率は格段に高くなりますので、本記事では建築基準法違反物件について詳しく解説します。

    【監修者】弁護士 森田 雅也

     

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    建築基準法違反物件とは

    建築基準法違反物件とは、その名の通り、建築基準法に違反している物件のことです。建築基準法は、建物の安全性を守るための最低限の基準として1950年に制定されました。

    建物の安全性は外観からは判断できないことが多いうえ、具体的な判断には専門的な知識も必要になります。長年に渡って使用される建物の安全性は、人の命にも関わる重要なものです。そこで、建物を建てる際には最低限守らなければならない基準を定め、違反者には罰則を課すことで、人々が安心して建物を利用したり売買などの取引ができたりするように定められたのが、建築基準法です。

    新たに建物を建てる際には建築確認という手続きが必要となり、原則として建築基準法に違反した建物は建てられないことになっています。それでも中には建築基準法に違反した物件が存在しているのが現実です。

    では、なぜ建築基準法に違反した物件が存在するのか、違反している物件にはどのような不都合があるのか、建築基準法に違反している物件をどうやって見分ければよいのか、という点について次章では詳しく解説していきます。賃貸経営を行うにあたって新たに物件を取得する際には、これらのリスクを十分に理解して判断していくことが必要です。

    なぜ建築基準法違反物件があるのか

    建物を建てる際には、建築予定の建物が建築基準法に違反していないかを確認するために、自治体などに建築確認の申請をすることが求められています。それなのに、なぜ建築基準法違反物件があるのでしょうか?建築基準法違反物件がある理由として、以下の3つが考えられます。

    違法建築だと分かっていて建てた

    1つ目の理由として、違法建築であることを認識していながら、建築確認申請を行った建物とは異なる建物を建てた場合が考えられます。この場合には、違法建築をした業者は違反が判明した時点で罰則の対象となるリスクを負っていることになります。

    法改正により後から違法になった

    建築基準法に適合していない物件の中で多く見られるのが、「既存不適格建築物」と呼ばれる建物です。既存不適格建築物とは、建築当時は問題なかったものの、後の法改正により法律に反してしまうケースです。

    先程も説明しましたが、建築基準法は建物の安全性を守るための基準として1950年に制定されました。一度制定された後も、建物の安全性に対する意識の変化に伴って法律の改正は行われています。

    法律の改正前から存在していた建物は、それ以前は法律自体がなかったのですから、厳密にいえば違法とはなりません。ですから、既存不適格建築物は、現行の建築基準法には反していますが、違法建築とはみなされません。ただし、新たに再築する場合には当然、現行の法律に適合した建物を建てる必要があります。

    増築やDIYなどが原因で違反物件になった

    建築基準法に適合した建物を建てた後に、増築やDIYなどを行ったことで違反物件になっているケースも考えられます。建築業者などによって増築の工事を行う場合には、原則として増築の際に新たに確認申請を行いますので、違反物件になるのは個人が行うケースに多くなります。

    建物を増築して床面積が増えた際には増築の登記をする義務もありますが、個人で増築やDIYを行った場合には増築登記もきちんと行われていない可能性があり、登記を見ても増築の事実が判明せず、増築によって建築基準法違反物件になっている可能性を見落とす危険性もあります。

    建築基準法違反物件(違法建築)の実例

    では、具体的な建築基準法違反物件の実例にはどのようなものがあるのでしょうか?以下に説明していきます。

    建ぺい率オーバー

    建築基準法違反物件としてよく見られるのが、建ぺい率がオーバーしているケースです。建ぺい率とは、土地の面積に対してどれだけの広さの建物を建てられるかの割合を定めたものです。

    建ぺい率 = 建物の建坪 ÷ 土地の面積 × 100
    ※建坪とは、建物を真上から見た時の面積のこと

     
    用途地域ごとに30~80%の範囲で定められており、たとえば、建ぺい率が50%の土地であれば敷地面積に対して50%の広さの建物までしか建てることができません。用途地域については3つ後の見出しにある「用途違反」で詳しく説明しますが、簡単にいうと、地域ごとに建てられる建物の用途が定められていることをさします。都市計画区域、および準都市計画区域以外の区域については原則的には建ぺい率の制限は適用されませんが、自治体によって別途制限が定められている地域もありますので確認が必要です。

    建ぺい率が定められている理由は、地域の特性に応じた住環境を保護するためです。敷地いっぱいに建物が建てられてしまうと、日当たりや風通しが悪く、防火対策上も問題がある街並みになってしまう可能性が高くなります。

    建ぺい率オーバーの建物が存在するケースとしては、建築確認申請とは異なる建築や増築、敷地の一部の売却などがなされるケースが挙げられます。たとえば、屋根のあるカーポートなどは、建ぺい率の計算上、原則として建物の面積の一部とされますが、中には、建ぺい率の制限を不当に逃れるために建築確認時点では申請していなかったカーポートを黙って増築工事してしまうケースなどもあります。

    また、先ほど述べたように、個人のDIYなどの延長で増築した際に建ぺい率をオーバーしてしまうケースや、建物を建てた後に敷地の一部を売却することで、既存の建物を建てるのに十分な敷地面積が不足する状態になるケースもあります。

    建ぺい率オーバーの物件を知らずに購入してしまい、再築するとなっても、定められた建ぺい率の範囲内の物件しか建てられませんし、行政からの勧告・指導があれば是正の義務が生じる可能性もあります。そのため、購入の際には、物件の現状をしっかりと確認することが重要です。

    容積率オーバー

    容積率とは、土地の面積に対する建物の延べ面積の割合のことを指します。

    容積率 = 建物の延べ面積 ÷ 土地の面積 × 100

     
    延べ面積とは、建物すべての階の床面積を合計した面積ことで、2階建ての建物であれば1階と2階の床面積の合計となります。

    容積率も建ぺい率と同様に、用途地域ごと、または自治体ごとに建物の安全性や住環境を保護する目的で定められています。容積率の制限の厳しい地域で、十分な広さの敷地を確保できない場合には、少しでも床面積を増やすための設計がなされることになります。

    たとえば、バルコニーや出窓は一定の条件を満たせば床面積に算入されないため、空間を広く利用することができます。また、下の階の床面積のうち1/2以下の面積であるといった要件を満たせば、ロフトも床面積に参入しなくて済みます。こういった方法をできるだけ取り入れれば、住空間を広く確保できるように工夫することができます。

    しかし、これらの条件を満たさないバルコニーやロフトを作ってしまったり、吹き抜けの予定だったにもかかわらず急遽ロフトを作ったりするなどの変更を行うケースが見られることがあり、このような場合には容積率オーバーとなってしまう可能性が生じます。

    採光不良

    建築基準法によると、住宅の居室には採光のために窓その他の開口部を設けなくてはならないとされています。そして、採光のための開口部の面積は、居室の床面積の1/7以上必要であると定められています。

    開口部の面積 ≧ 居室の床面積 ÷ 7

    ただし、ここでいう「開口部の面積」とは、用途地域や開口部の位置などによる光の入りやすさを考慮して、「採光補正係数」というものを掛けて計算した数値となり、こうして計算された開口部の面積を有効採光面積といいます。

    開口部の面積 × 採光補正係数 = 有効採光面積

     
    日当たりの良さが重視されると考えられる住居系の地域では、より多くの開口部を設ける必要があるため、採光補正係数は小さく設定されています。反対に、商業系や工業系の地域では採光補正係数は大きくなり、必要な開口部が少なくても良いように調整されています。

    建築基準法で床面積の1/7以上必要とされている開口部とは、この有効採光面積となります。有効採光面積は形式的な計算で求められるものですので、現実的な部屋の日当たりの良さを保証するものではありませんが、採光のために必要な基準としての役割を果たしています。

    用途違反

    用途地域の定めのある地域では、定められた用途以外の建物を建てることはできません。用途地域とは、住居や商業、工業などの建物の用途によって地域を13種類に区分し、それぞれに適した環境を維持するために、建てられる建物の種類や大きさなどを制限している地域のことです。

    たとえば、住居系の地域に大型の商業施設や工場などが建つことになると、静かで安全な住環境を維持することが難しくなります。そのため、これらの施設を建てることを制限することで、当該地域に住む住民の静かで安全な住環境を維持しているのです。

    住居系の地域の中でも、第一種低層住居専用地域では原則として店舗や飲食店を建てることができませんが、それ以外の地域では建てられるなど、細かい区分けがされています。事務所としての利用ができない地域や、倉庫を建てられない地域もあります。

    建物を建てる際には、建物の使用目的が用途地域の用途制限違反にならないかを十分調べたうえで、建ぺい率や容積率などが用途地域ごとに定められた基準に従っているかを守ることも必要です。中には住居を店舗や事務所に使用したり、工業専用地域の建物を寄宿舎にしたりと、途中から用途の変更を行っている場合もあり、その用途の変更自体が建築基準法の違反になっている可能性もありますので注意が必要です。

    違法増築

    原則として、10㎡以上の増築を行う際には建築確認の申請を行わなくてはなりません。しかし、個人がDIYで増築する場合や後から倉庫を設置する場合など、この決まりを知らないために違法建築になってしまっているケースがあります。

    また、建築業者によっては、確認申請の必要を認識していながら黙認して増築工事を行っているケースもあります。増築箇所がある物件の場合には、建築確認はきちんとされているかどうか、違法建築になっていないかどうかを確認することが重要です。

    違法建築にはどのようなリスクがある?

    前章のように違法建築にはいくつかの種類が存在していますが、違法建築には具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?以下で確認していきましょう。

    入居者の安全面のリスク

    建築基準法は、火災や地震などの災害の際の安全性や、日常生活において快適な住環境を維持するための基準として設けられています。これらの基準は大規模地震といった災害などを通して都度見直しが行われているため、現行法の水準が現在において必要であると考えられている内容だといえます。

    そのため、逆にいえば、建築基準法の規定に反している建物はもちろん、既存不適格建築物についても現在必要だと考えられている入居者の安全面のレベルを満たしていない可能性がある、と考えることができます。違法建築物件は入居者の安全面においてリスクのある物件だといえるでしょう。そして、違法建築物件で事故が発生した場合などには、所有者として責任を問われるリスクもあります。

    融資が厳しい可能性

    違法建築物件だと、金融機関から融資を受けることは厳しくなる可能性があります。金融機関は、万が一、貸した人からの返済が滞った場合に、担保にしている物件を売却した資金での回収を予定して資金の融資を判断します。

    ところが、違法建築物件にはさまざまなデメリットがあり、担保にしたとしても通常通りに換金できない可能性があるため、担保価値は非常に低く算定されます。金融機関の判断にもよりますが、違法建築物件であると融資自体が受けられないケースも多いため、購入を検討する際には注意が必要です。

    売却が難しい可能性

    上記のように、違法建築物件には入居者の安全面においてのリスクがあるケースもあり、違法建築ではない物件に比べれば、居住することに抵抗をもつ人は一定数いると考えられます。また、賃貸物件として貸し出した際に事故があれば、オーナーの責任が問われるリスクもあります。

    また、建ぺい率オーバーの物件の場合には、建物を立て直すとなったら現在の建物よりも建坪の小さい建物しか建てることができなくなります。場合によっては建物を一部除去しなくてはならなくなる可能性もあり、購入をためらう人は一定数存在すると考えられます。このように、違法建築物件は売却面においても難しい可能性があります。

    行政からの勧告、指導が入る可能性

    違法建築物は、行政からの勧告、指導が入る可能性があります(既存不適格建築物についても指導が行われる可能性があります(建築基準法9条の4参照))ので、購入に際しては注意が必要です。違法建築物の是正の責任は、違法建築をした建設業者や依頼主だけではなく、違法建築物を購入した所有者にも発生することがあります。場合によっては建物を撤去しなくてはならないケースがあり、従わなければ刑事罰を受ける可能性もあります。

    建築基準法違反の物件を調べる方法

    物件を購入する際に建築基準法違反の物件を調べるには、「建築確認証」や「検査済証」があるかを確認する方法があります。これらを紛失しているなどの理由で手に入らない場合には、市区町村の役所で「建築確認台帳記載事項証明」を発行してもらうことで建築確認のおおよその内容を調べることができます。

    「建築確認日付」と「検査済日付」があれば、少なくとも建築確認を受けている建物であるということは知ることができます。この時に「建築計画概要書」も入手すればさらに詳細な情報を入手できます。

    しかし、建築確認を受けている物件であっても、その後に違法な増築が行われている可能性はあります。そこで、目視による現地確認や図面と現況の照合などで、現在の状況を把握することも重要です。登記簿の確認も忘れずに行いましょう。

    建築基準法違反物件を理解して不動産投資を成功させよう

    建築基準法は、最低限の建物の安全性を保障し、良好な住環境を維持するために定められた法律です。そのため、基準法に従って建てられているということは、一定の基準を満たしている保証となります。

    しかしその反面、違反している物件は融資や売却が難しかったり、行政からの勧告・指導が入る可能性があったりするなど、さまざまなリスクを抱えています。違反している物件を知らずに入手してしまい、後から後悔することがないように、建築基準法についての理解を深めてみてください。

    【監修者】森田 雅也

    東京弁護士会所属。年間3,000件を超える相続・不動産問題を取り扱い多数のトラブル事案を解決。「相続×不動産」という総合的視点で相続、遺言セミナー、執筆活動を行っている。

    経歴
    2003 年 千葉大学法経学部法学科 卒業
    2007 年 上智大学法科大学院 卒業
    2008 年 弁護士登録
    2008 年 中央総合法律事務所 入所
    2010 年 弁護士法人法律事務所オーセンス 入所

    著書
    2012年 自分でできる「家賃滞納」対策(中央経済社)
    2015年 弁護士が教える 相続トラブルが起きない法則 (中央経済社)
    2019年 生前対策まるわかりBOOK(青月社)

     

  • 大家向け|賃貸キッチンリフォームを予算別・種類別に紹介

    大家向け|賃貸キッチンリフォームを予算別・種類別に紹介

    空室リスクや家賃下落リスクに備えるために、賃貸物件のキッチンのリフォームを検討するケースがあります。この記事では、費用対効果の高いリフォームを行うことで賃貸経営を成功させるために、賃貸物件のキッチンリフォームに関する情報や費用などについてお伝えします。費用の回収までを考えてリフォームし、後悔しない選択をしていきましょう。

     

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    賃貸物件のキッチンリフォームは回収まで考えて行おう

    賃貸物件のキッチンリフォームをする際には、自身がどのような入居者を想定しているのか整理し、その入居者の需要を予測するところから始めることをおすすめします。その部屋を利用する層の主なライフスタイルによって、キッチンのクオリティへの優先度が変わってくるからです。

    たとえば、単身者向けの部屋の場合にはあまり自炊をしない入居者が入居する可能性もありますし、キッチンの仕様に拘るよりも、どちらかといえば家賃の値段が安いほうが好まれる傾向があると予測できます。それならば、無理して新品のキッチンに変えるよりも、壊れた部品のみ交換し、クリーニングで清潔にして家賃を抑えるほうが需要は高いと考えられます。

    一方、ファミリータイプのマンションであれば、部屋の選択権は女性にあることが多いため、キッチンの仕様は部屋を決める時の重要なポイントになる可能性があります。

  • キッチンの動線や家具の配置などに配慮した、使いやすい間取りになっているか?
  • 調理台はガス式かIH式か?
  • システムキッチンか従来型のキッチンか?
  • 収納は十分にあるか?
  •  
    など、想定する家賃の範囲の中でキッチンの魅力を高めることは、入居率を高めることにつながるはずです。

    賃貸物件のキッチンリフォームをする上では、これらのポイントを念頭に置きながら、さらにリフォーム費用の回収まで考えて行わなくてはなりません。まず、家賃をアップするのか据え置くのか、物件のターゲットと費用との兼ね合いから決めることが大事です。

    空室対策のためのキッチンリフォームなら、家賃は据え置きというパターンが一般的だと考えられるので、リフォーム内容は最小限にすべきでしょう。反対に家賃アップが前提のリフォームなら、資金をどのくらいの期間で回収するのか考えることがポイントになります。その際に、アップした後の家賃は周辺家賃と比べて競争力のあるものかを考える視点を忘れないことも大切です。

    賃貸キッチンリフォーム|予算から考える

    キッチンリフォームの相場は、主に以下の費用を合計するとおおまかな費用感が分かります。

  • キッチン本体の費用
  • 古いキッチン本体の解体や処分の費用
  • 配管工事の費用
  • クロスやフローリングなどの張り替え工事の費用
  •  
    中でも、キッチン本体の費用や、キッチンの配置を変える場合の配管工事の費用などは高額になる傾向がありますので、予算との兼ね合いでこれらの費用の配分を考えていくことが必要です。

    ここでは、かけられる費用の程度により3段階に分けて、それぞれどの程度までリフォームできるのかを紹介していきます。回収までを見据えた賃貸キッチンリフォームを行うにあたって、ぜひ参考にしてみてください。

    50万円未満

    家賃をアップしないでリフォームするという判断をするのであれば、費用は50万円未満に抑えたいところです。その場合に可能なのは、水栓交換やコンロ、レンジフード交換などの部分的工事のみとなるでしょう。

    システムキッチンのコンロの交換工事は大体10~20万円ほどが相場となり、ガスを使用しているコンロから IHへの変更の場合には、おおよそ20万円以上かかるのが一般的です。また、レンジフードの交換費用の相場はおおよそ10万円ほど、食洗機を交換したり新たに設置したりする際の費用は7~10万円ほどが多いです。

    使用頻度にもよりますが、水栓の接続部の緩みやパッキンの劣化などは10年前後で生じてくるので、取り換えが必要になります。部品自体は数百円程度で購入できるため、DIYが得意であれば自分で修理することもできますが、工事業者に依頼するのであれば出張費などもかかるため数千円から1万円ほどかかります。それなので、1カ所の交換が必要になった場合には、キッチンだけでなく洗面所やお風呂場などの水回りをまとめて交換することを検討するとよいかもしれません。

    このように、最低限の費用でリフォームを行うのであれば、故障や劣化などにより取り換えが必要となった部分を重点的に行い、費用対効果の高いリフォームをすることがポイントです。なお、単身世帯向けのコンパクトなキッチンであれば20万円ほどでキッチン本体を新しく交換することができるので、クロスやフローリングの張り替えを行っても50万円未満に抑えられる可能性があります。

    50万円~150万円

    リフォームの予算として50万円~150万円ほどを確保できるのであれば、ファミリータイプのマンションでもキッチン本体の交換ができたり、グレードによってはIHへの交換ができたりする可能性があります。

    システムキッチンの価格は、そのグレードや発売時期によって大きく差があります。デザインやメーカー名などを気にしないのであれば50万円以下という安い価格で購入することは可能ですが、一般的には100万円~150万円くらいが相場となります。

    気を付けなくてはならないのは、キッチン本体の価格以外に工事の費用もかかることです。工事業者やオプションによっても違いがありますが、多くの場合は20万円以上かかることが普通ですので、キッチンの費用にこの工事費用が含まれているか確認することを忘れないでください。

    工事費用を含めた見積もりの額を差し引いても予算に十分な余裕があるなら、クロスやフローリングなどの床材の交換やオプションの追加など、キッチン周りの全体的なリフォームまで行うことを検討してもよいかもしれません。

    150万円以上

    ファミリー向け物件ではキッチン選びが重要です。150万円以上の予算をかけられるのであれば、ある程度グレードの高いキッチンを選んだり、クロスやフローリングに凝ったりすることができます。また、新たに収納を設けたり、食洗器などのオプションを付けたりすることを検討する余地も出てきます。

    そのほか、壁付けキッチンを対面型キッチンにする、モダンなアイランドキッチンを導入するなど、大幅なレイアウトの変更を伴うリフォームも視野に入ってきます。

    食洗器の取り付け費用は約7万円~、壁付けキッチンを対面型にする費用は60万円~200万円程度、アイランドキッチンにするならば150万円~200万円程度が相場となります。

    ただし、ある程度高額なリフォーム費用をかけるのであれば、回収について本格的にシミュレーションする必要があります。たとえば、200万円かけてリフォームした場合を考えてみましょう。リフォームによってアップする賃料が月に1万円であれば、以下の計算となります。

    1万円×12カ月×16.66年=200万円

     
    この場合、回収までに約17年もかかってしまうことが分かります。リフォームにかかった費用は、できれば10年以内には回収できるようなプランが望ましいと考えられます。

    そこで、アップする賃料を2万円にしてみましょう。

    2万円×12カ月×8.33年=200万円

     
    この場合は9年で回収できることになります。

    ここで考える必要があるのが、リフォームを実施したことで2万円の賃料をアップすることは可能なのか?という点です。家賃の相場が20万円程度の部屋であれば、少々高くても素敵な部屋に住みたいという入居者が多いのではないかと考えられますし、20万円から22万円への変更はそれほど気にならないかもしれません。

    しかし、10万円の部屋に多額の費用をかけてリフォームし、12万円の家賃にした場合はどうでしょうか?設備が新品ではなくても、家賃が安いほうを好む入居者が多いのではないかと想定すると、入居率のアップにはつながらない可能性は出てくるでしょう。

    このように、立地や部屋のグレードなどから想定される入居者の志向を参考にして、リフォームの内容を吟味することが大事であると考えられます。

    賃貸キッチンリフォーム|キッチンの種類から考える

    前章では予算別に賃貸のキッチンリフォームを考えていきましたが、本章ではキッチンの種類から考えてみましょう。キッチンにはいくつかの種類や形状があり、それぞれ特徴があります。ターゲットとする入居者や予算によって、どのようなタイプが向いているかをよく考えてプランを練ることをおすすめします。

    キッチンは設置場所により2種類に分かれる

    キッチンは設置場所により「クローズドキッチン」と「オープンキッチン」の2種類に分かれます。

    クローズドキッチンとは、キッチンが1つの部屋として他の部屋から独立しているタイプで、従来よくみられた方式でした。料理のにおいや煙がキッチンの外に広がりにくく、多少キッチンが乱雑でも外部から見えないという利点があります。この場合は、部屋の構造上、キッチンを壁にぴったりと付けて設置する壁付けキッチンとなります。

    一方、オープンキッチンとはダイニングやリビングルームと一体になったタイプです。対面型キッチンにすれば部屋全体が見渡せるので開放感があるとともに、空間を広く感じさせる効果が期待できます。家族の様子を見ながら料理することができるため、子育て世代には人気のタイプです。

    ただし、キッチンの状況や料理をしている様子は丸見えになるため、収納や整理に気を使わないと乱雑な印象を与えてしまいます。また、においや油汚れなどが部屋全体に広がる可能性があるため、換気や掃除もまめに行う必要があります。

    古いタイプのマンションでは壁付けタイプがほとんどですが、リフォームの機会を利用して対面型にすることで入居率を高め、できれば賃料アップも図りたいと検討するオーナーは少なくないでしょう。しかし、壁付けタイプを対面型タイプに変更する場合はキッチンの場所の移動が必要となるので、配管工事や電気工事なども発生し、そのぶん費用は高額になります。この工事の場合、取り付けるキッチンのグレードによるものの、60万円~200万円程度が費用相場となります。

    キッチンの形状により4種類に分かれる

    キッチンは前章のように設置場所によって種類が分かれるほか、形状によってもさらに4種類に分かれます。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか、以下で解説していきます。

    I型

    I型キッチンとは、コンロと調理台・シンクがI字型に一列になっているタイプをいいます。比較的コンパクトなタイプが多く、壁付けタイプのキッチンで使用される例が多く見られます。狭い空間にも設置することができ、形状が単純なため、価格もリーズナブルなものが多数揃っていることがメリットといえます。

    しかし、大型のものになるとコンロからシンクまでの幅が長くなり、キッチンの隣に冷蔵庫を置く場合にはさらに動線が長くなるため、調理中の作業効率が悪くなるというデメリットもあります。

    L型

    L型キッチンとは、コンロとシンクをL字型に配置し、これらが直角になるようにしたタイプです。コンロとシンクの距離が近くなり、調理する際には身体の向きを変えればほぼ同じ位置で作業することができることから、作業動線に優れた設計といえます。また、作業スペースを広くとることができるのもメリットで、料理にウエイトを置いたライフスタイルの入居者には大きな魅力があるといえるでしょう。

    ただし、L型キッチンの設置には広い空間が必要となること、調理台のスペースがL字型の角の部分にあたるため、収納スペースとして利用するには使い勝手が悪いことなどがデメリットとなります。I型キッチンと比べると、一般的には設置の費用も高額になります。

    アイランド型

    アイランドとは、英語で「島」という意味です。海に浮かぶ島のように、キッチンスペースの中で壁から離れた位置に配置されるタイプをアイランド型と呼びます。

    アイランド型キッチンの最大の魅力は、目の高さの位置に遮るものがないため開放感があり、空間を広く演出できることです。シンプルかつスタイリッシュな作りであるため、キッチンスペースのデザイン性を優先したい人には人気のあるタイプです。また、キッチンの周辺に十分なスペースがあるため、知人を呼んで複数人で料理を楽しみながらパーティーするといったライフスタイルが好きな人にも向いています。

    反面、設置するためには広いスペースが必要であることや、遮るものがないのでキッチンが丸見えになる上に収納スペースが少ないことから、片付けが苦手な人には向かないスタイルであるといえます。高級感がありますが、実際に費用も高くなり、150万円~200万円程度が相場となります。人によって好みが分かれるため、賃貸物件への導入には慎重な判断が必要かもしれません。

    ペニンシュラ型

    ペニンシュラとは「半島」という意味で、キッチン本体のどちらか一方の端を壁に接する形で配置する形状が「半島」に似ていることから名付けられたものです。上部に吊戸棚などの収納を設けない場合のペニンシュラキッチンは、アイランド型と同様に開放感があり、リビングとの一体感を感じられるレイアウトになります。

    さらに、片方の端を壁に付けて設置するのでアイランド型ほど広いスペースを必要としないこと、キッチン本体の前にカウンターを取り付ければ配膳台などとして利用できること、キッチンに取り付けるカウンターの位置を高くする・腰壁を設けるなどでキッチンの作業スペースの目隠しが可能であることなどから、広く好まれています。

    しかし、収納スペースが少ないことなどのデメリットはアイランド型と同様です。費用相場は設置するキッチンのグレードによって変わりますが、100万円~200万円程度を想定しておく必要があり、アイランド型よりは手頃な価格帯となります。

    賃貸のキッチンリフォームをスムーズに進めるためには

    最後に、賃貸のキッチンリフォームをスムーズに進めるためのポイントを紹介します。

    まず、リフォームにかけられる費用の収支をシミュレーションすることからはじめましょう。その後、予算の範囲内でどこのリフォームをするのか決めていきます。どのようなリフォームをするのか決めたら、その内容に合わせて、マンション内の梁の場所や形状、電気の配線や給排水、ダクトなどの位置関係、マンションの構造上撤去できない壁がないかなどを事前に確認しておくとよいでしょう。

    また、リフォームの前にマンションの管理規約を確認しておくことも大切です。マンションによっては、騒音対策のために使用可能なフローリングの等級などに基準を設けているケースがあります。構造上の耐久性を維持するために、外壁に工事を加えるようなリフォームを禁止するといった定めのあるケースもあります。

    リフォームが管理規約に基づいて計画されているかの確認や、工事による騒音への苦情に対応するために、事前に管理組合の承諾が必要となっていることも多くあるので注意が必要です。

    そのほか、リフォームに国や自治体の補助金制度が利用できるケースもありますので、必要な情報収集を行っておくとよいでしょう。

    そして、リフォームの成功には業者選びも大きなポイントです。相談したり相見積もりを取ったりすることで、

  • 費用は良心的か?
  • 見積もり費用の内訳は合理的か?
  • 信頼できる業者であるか?
  •  
    などの観点から、複数のリフォーム業者のプランを比較してみてください。

    マンションなどの集合住宅でリフォームを行う際、工事の騒音でトラブルになるのはよくあるケースです。上下左右の部屋には前もって挨拶に行き理解を求めるとともに、騒音の出る日や時間のスケジュール表などを渡しておくことで、苦情が出ないように対応しておくことも忘れないようにしましょう。

    賃貸のキッチンリフォームは入居者層と予算をもとに考えよう

    キッチンやバス、トイレなどの水回りは、部屋探しの際に入居者が気になるポイントです。特にファミリー向けのマンションであれば、キッチンの仕様は入居の際の大きな決め手になる可能性が高いと考えられます。ですから、キッチンリフォームは空室対策として効果的な方法の1つといえるでしょう。

    この記事では、賃貸キッチンリフォームは家賃で回収できる金額であることが大切であるため予算から考える必要がある点、入居者の需要を想定したキッチンの選択が重要なポイントである点、賃貸キッチンリフォームをスムーズに進めるためのポイントなどをお伝えしました。

    リフォームによって物件の魅力を高めて入居率をアップさせ、賃貸経営の収益力を高めるために、この記事をぜひ参考にしてみてください。

  • 不動産取得税の計算方法を解説!シミュレーションや申告方法も

    不動産取得税の計算方法を解説!シミュレーションや申告方法も

    戸建てやアパート、マンションといった集合住宅に関わらず、不動産を取得した場合は原則として不動産取得税が課税されます。不動産取得税は土地と建物で別々に定められているほか、住宅と非住宅、新築と中古など、物件の条件によって税率や適用される軽減措置が異なります。特に不動産の取得を検討中の人は、不動産取得税の計算方法や税率、軽減措置の条件などを把握しておくことが大切です。本記事で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

     

    オーナーのための家賃保証
    「家主ダイレクト」

    家主ダイレクトは、27万人を超えるオーナーに利用されている「オーナーが直接使える」家賃保証サービスです。

    • 賃貸経営をしているけど、なぜか手元にお金が残らない
    • 家賃の値下げはせず空室対策をしたい
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    こうしたお悩みを抱えている方は、まずは資料ダウンロード(無料)しお役立てください。

    不動産取得税とは

    不動産取得税とは、不動産の取得に対して、所在地の都道府県が課税する税金です。不動産の取得には、自分が住むために住宅を購入する場合、不動産投資を目的に土地や建物を購入する場合など、さまざまなケースが考えられます。以下に、課税対象となる不動産の条件と、不動産取得税が非課税になる「免税点」の解説をします。

    課税対象になるもの

    不動産取得税は、新築や増改築、売買、交換、贈与によって取得した土地・建物などの不動産を取得した人に課される税金です。物件を購入した場合だけでなく、無償で受け取った場合も対象になるほか、不動産登記が行われていない物件を取得したケースでも課税の対象となります。

    ただし、相続・法人の合併、分割により取得した場合は例外的に非課税となります。そのほかにも、公共の用に供する道路の取得、土地区画整理事業等での換地の取得など、非課税となるケースはいくつかありますが、管轄する都道府県によって条件が異なることがあるため、判断が難しい場合は区役所や税務署へ確認することをおすすめします。

    なお、不動産取得税の課税は所有権を取得した段階であるため、地上権、賃借権、永小作権、抵当権などの取得では課税の対象にはならないことを覚えておきましょう。

    不動産所得税が非課税になる「免税点」とは?

    免税点とは、標準課税額がその額に満たない場合は、課税対象とならない値のことです。不動産取得税は一定の価値がある不動産を対象としているため、課税標準となるべき額が免税点を下回る場合では非課税となります。具体的には以下の3パターンが含まれます。

    ・課税標準となるべき額が10万円に満たない土地
    ・課税標準となるべき額が23万円に満たない家屋の建築
    ・課税標準となるべき額が12万円に満たない家屋の建築以外での取得

     
    「課税標準となるべき額」とは、対象となる不動産の価格に軽減措置などを適用させた後の、税率を乗ずる額をいいます。

    なお、不動産の価格は、基本的には固定資産税評価額が適用されます。固定資産税評価額とは固定資産税の基準となる評価額のことで、各市区町村(東京都23区の場合は都)が算定し、3年に1回見直しがなされます。固定資産税評価額は、もしも地価に大幅な変動が起こっても納税負担が大きくなりすぎないよう、公示価格の7割程度になるように調整されています。

    【参考】公示価格とは?
    公示価格とは、国土交通省が発表している土地の価格です。都市計画区域内で標準的な土地を選定し、毎年1月1日時点で1㎡当たりの正常な価格を判定して、3月中旬から下旬頃に公示されます。公示価格は役所や図書館などで調べられるほか、国土交通省のサイト内にある「標準地・基準地検索システム」から検索することもできます。

    不動産取得税を計算する方法

    不動産取得税は、基本的には課税標準額に一定の税率を乗じて計算されます。ただし、土地と建物によって税率が異なります。また、それぞれに軽減措置の適用があるため、事前に理解しておくことが大切です。

    土地の不動産所得税の税率、軽減措置

    土地の不動産取得税の税率は、原則として4%です。ただし、対象となる不動産の取得日が2008年(平成20年)4月1日~2024年(令和6年)3月31日までの場合、不動産取得税の税率は以下の通りになることが定められています。

  • 土地または家屋(住宅)……3%
  • 家屋(非住宅)……4%
  •  
    したがって、令和6年3月31日までは土地の税率は3%となります。また、土地を取得した後、一定期間内に特例適用住宅を取得した場合は、「45,000円」または「土地1㎡あたりの価格×1/2×住宅床面積×2×3%」のうち金額の大きいほうを減額できます。特例適用住宅とは、後述する「住宅を取得した場合の課税標準の特例」に該当し、床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅のことです。

    建物の不動産所得税の税率、軽減措置

    土地と同様、建物の不動産取得税の税率も原則として4%ですが、上で説明した通り、住宅用家屋も2024年(令和6年)3月31日までは3%となります。建物の場合は住宅用か非住宅用かにより税率が1%異なります

    住宅を取得する場合、要件を満たせば軽減措置を受けられます。以下の通り、新築と中古によって要件が異なるため、よく理解しておきましょう。

    新築の場合は、1戸あたり、固定資産税評価額等から1,200万円を控除したものが課税標準となります。要件としては「床面積50㎡(貸家共同住宅40㎡)以上240㎡以下の建物であること」です。また、建物が長期優良住宅に該当する場合は100万円が上乗せされ、1,300万円の控除を受けることができます。

    中古の場合、控除額は建築時期により100万円~1,200万円まで幅があります(建築時期別の控除額の詳細は次章のシミュレーション内で紹介)。要件としては「床面積50㎡以上240㎡以下、築年数20年(耐火構造25年)以内または新耐震基準に適合している中古住宅等」です。

    取得する物件の金額にもよりますが、新築物件の「1,200万円控除」は大きな節税効果を発揮するといえます。一方、中古物件の控除額は建築時期などによって異なるものの、基本的には築年数が新しいほど控除額は大きくなります。そのため、事前に取得する物件の築年数や控除の条件を把握しておくことが重要です。

    参考:東京都主税局 – 不動産取得税

    不動産所得税の計算をシミュレーションしてみよう

    ここまで不動産取得税の計算方法や税率などを説明してきました。住宅と非住宅、新築と中古によって条件が異なる点について理解できたのではないでしょうか。本章では計算を具体的にイメージできるよう、新築・中古それぞれの場合の計算をシミュレーションしてみます。

    新築の場合のシミュレーション

    初めに、新築住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件とします。

    【建物】
    ・新築
    ・床面積:130㎡
    ・購入価格:3,000万円
    ・固定資産税評価額:1,500万円

    【土地】
    ・敷地面積:100㎡
    ・購入価格:1,500万円
    ・固定資産税評価額:1,200万円(土地1㎡あたりの単価は12万円)

    ※土地を取得した後、一定期間内に新築住宅(特例適用住宅)を取得したこととする

     
    この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    1,500万円-1,200万円×3%=9万円

     
    新築住宅であるため、1,200万円の控除が適用されます。したがって、固定資産税評価額から1,200万円を差し引いた金額に対し、3%を乗じた金額である9万円が建物部分の不動産所得税です。

    一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    1,000万円×1/2×3%=15万円

     
    以上の計算により15万円が不動産所得税となりますが、特例適用住宅の軽減が使用できる物件ですので、土地1㎡あたりの単価は12万円を用いて軽減金額を導き出します。
    ※軽減金額を求める計算式は、前述した通り「土地㎡あたりの価格×1/2×住宅床面積×2×3%」です。

    12万円×1/2×100㎡×2×3% =36万円

     
    15万円から36万円を引くとマイナスになるため、土地の不動産取得税はゼロとなります。よって、この場合の不動産取得税は建物部分のみとなり、9万円と算出できます。

    中古の場合のシミュレーション①

    次に、中古住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件で、新築時期は2008年(平成20年)1月とします。

    【建物】
    ・中古(2008年1月に新築)
    ・床面積:130㎡
    ・購入価格:2,000万円
    ・固定資産税評価額:1,000万円

    【土地】
    ・敷地面積:100㎡
    ・購入価格:1,000万円
    ・固定資産税評価額:600万円(土地1㎡あたりの単価は6万円)

     
    この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    1,000万円-1,200万円×3%=0

     
    中古住宅の場合、軽減される金額は築年数によって異なります。具体的には以下の表をご覧ください。

    新築された日 控除額
    1997年(平成9年)4月1日以降~ 1,200万円
    1989年(平成元年)4月1日~1997年(平成9年)3月31日 1,000万円
    1985年(昭和60年)7月1日~1989年(平成元年)3月31日 450万円
    昭和56年7月1日~1985年(昭和60年)6月30日 420万円
    1976年(昭和51年)1月1日~1981年(昭和56年)6月30日 350万円
    1973年(昭和48年)1月1日~1975年(昭和50年)12月31日 230万円
    1964年(昭和39年)1月1日~1972年(昭和47年)12月31日 150万円
    1954年(昭和29年)7月1日~1963年(昭和38年)12月31日 100万円

    参考:東京主税局 – 不動産取得税

    本事例の場合、建物は2008年(平成20年)以降に建築されているため、1,200万円の控除が可能です。すると、控除額が物件の評価額を上回るため、不動産取得税はゼロになることがわかります。

    一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    600万円×3%=18万円

     
    中古物件の場合、利用できる控除はないため、土地部分の不動産取得税は18万円になります。建物部分の不動産取得税がゼロであることから、この事例の場合の不動産所得税は18万円と算出できます。

    上記2つの事例を比較すると、土地と建物を合計した固定資産税評価額は、新築が2,700万円、中古が1,600万円であり、新築のほうが1,100万円も高くなっています。ところが、不動産所得税は新築が9万円、中古が18万円であり、中古のほうが高額になっていることから、新築に適用される控除が大きな節税効果を発揮していることが分かります。もちろん、節税のメリットだけを考え新築物件を購入するのは望ましくありませんが、購入後に支払う税金の目安を考えたうえで検討することは大切です。

    中古の場合のシミュレーション②

    最後に、築年数40年と古い中古住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件で、新築時期は1982年(昭和57年)1月とします。

    【建物】
    ・中古(1982年1月に新築)
    ・床面積:130㎡
    ・購入価格:1,000万円
    ・固定資産税評価額:500万円

    【土地】
    ・敷地面積:100㎡
    ・購入価格:1,000万円
    ・固定資産税評価額:600万円(土地1㎡あたりの単価は6万円)

     
    この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    500万円-420万円×3%=2.4万円

     
    新築された日が1982年(昭和57年)の場合、上で紹介した表のうち昭和56年7月1日~昭和60年6月30日の項目に該当することから、控除額は420万円だと分かります。したがって、建物部分の不動産所得税は2.4万円です。

    一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。

    600万円×3%=18万円

     
    土地と建物部分の不動産取得税を合計します。

    2.4万円+18万円=20.4万円

     
    以上より、本事例のケースの場合、不動産所得税は20.4万円だと算出できます。

    1つ上の中古物件の事例と築年数以外の条件はあまり変わりませんが、築年数が古いと建物の控除額が少なくなることから、不動産取得税の合計は高くなることが分かります。

    不動産所得税の軽減措置を受けるには「申告」しよう

    不動産所得税には土地・建物それぞれに軽減税率があることを紹介しましたが、軽減措置を受けるためには税務署などへの「申告」が必要になります。たとえ条件を満たしていたとしても、申告していなかった場合は軽減措置が反映されない可能性があるので注意が必要です。

    軽減税率の申告は、不動産を取得した日から一定期間内に行わなければなりません。申告の期限は都道府県によって個別に定められており、もし期限を過ぎてしまうと軽減措置が受けられない可能性があるため、必ず事前に確認するようにしましょう。申告する方法は、「不動産取得申告(報告)書」を記入して、税務署などへ提出するのが基本です。

    不動産取得税の支払いは、不動産を取得してから数カ月後に管轄の税務署から送付される納税通知書によって行います。通知書に支払い期日が記載されているため、期限内に税務署の窓口、金融機関、コンビニエンスストアなどで納付を行うのが一般的な方法です。これは自動車税や個人事業税などの納付方法と同様の方式となります。なお、近年ではインターネットを利用したクレジットカード払いを適用しているケースもあるので、カードによる支払いをしたい人は事前に管轄の税務署へ確認するようにしてください。

    支払い期限内に申告をしなかった場合、罰則が課されることはありませんが、延滞金が発生する場合があります。また、長期間納税をしないと督促状が届き、さらに期間が経つと財産の差し押さえなど厳しい措置を取られる可能性があるため、早めに支払うことをおすすめします。

    不動産所得税の計算方法を理解して目安を掴めるようにしよう

    不動産取得税の金額は決して小さくありません。取得した物件価格にもよりますが、数十万円の支払いになるケースも考えられます。取得から数カ月後に支払う必要があることから、物件購入時の初期費用として見込んでおく必要があります。納税通知書の金額と実際に考えていた金額に乖離があると予想外の出費になってしまう可能性があるため、物件の購入前にどのくらいの金額になるか自身でシミュレーションし、目安を掴んでおくことが大切です。

    また、土地と建物、新築と中古によって税率や適用可能な軽減措置が異なる点を理解しておく必要があります。特に、新築と中古物件の軽減措置の違いはしっかりと頭に入れておきましょう。今後、不動産の取得を検討している人は、ぜひ不動産取得税の目安を事前に把握して計画的な資金計画を立てるようにしてみてください。

  • 不動産の担保評価|評価が決まる仕組み、ローン利用の流れ

    不動産の担保評価|評価が決まる仕組み、ローン利用の流れ

    物件の「担保評価」は、特に不動産担保ローンにおいては、金融機関が融資額を決定する重要な判断材料となります。したがって、不動産担保ローンを利用する場合は、担保評価が決まる仕組みやローンを組む流れを把握しておくことが大切です。本記事で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

     

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    不動産の担保評価とは

    不動産の担保評価とは、投資対象となる不動産の物的担保としての評価です。物的担保とは、債務者が債務を返済できなくなった場合に、その物を換金することで債務を回収できるだけの価値のあるものを指し、物品のほか土地や建物といった不動産も対象になります。

    したがって、担保評価が高い物件であるほど高値で売却できるものと判断され、担保として強い価値を持ちます。なお、その不動産を売却した場合にいくらで売れるのかを算出した金額のことは「担保評価額」といいます。

    不動産の担保評価が決まる仕組み

    不動産の担保評価は、基本的に「市場価格×掛目」で決まります。市場価格とは、不動産独自の評価方法で算出された価格であり、実際に物件を売却した場合に取引される価格に近い金額になります。

    掛目とは、金融機関が融資を行う際の担保に掛ける一定の比率であり、不動産の場合は70%程度が目安となっています。しかし、ローンの種類や保障期間の有無、金融機関によって数値は異なるため、高い融資を受けたい場合は複数の金融機関を比較することをおすすめします。

    また、金融機関は不動産の担保評価だけで融資額を決めるわけではなく、年収や勤務先、家族構成などといった個人の属性も考慮します。そのため、担保評価が低くても、属性をはじめとしたその他の要素で高い信用を得られれば、希望通りの融資額を受けられる可能性はあります。

    不動産の市場価格を算出する方法

    前章で説明した通り、不動産の担保評価を知るためには、まず市場価格を把握しなければなりません。ただし、不動産の評価方法は土地と建物で異なるため、それぞれの違いを理解しておく必要があります。

    土地の評価方法

    土地の評価は、主に路線価や基準地価を使って算出されます。路線価と基準地価はそれぞれ評価する機関や評価時期などが異なるため、内容をよく理解しておく必要があります。以下に違いをまとめます。

      路線価 基準地価
    評価する機関 国税庁 都道府県
    評価時期 毎年1月1日時点 毎年7月1日時点
    公表時期 毎年7月1日 毎年9月下旬
    調査地点 路線(道路)に面する土地の1m2当たりの価格 「基準地」1m2当たりの価格

     
    路線価は基本的に、相続税や贈与税などの税金計算のために使用する指標であり、時価と乖離しているケースも少なくありません。一方、基準地価は都道府県が国よりも細かい地点を調査して、現状に即した価格で公示している価格です。しかし、こちらも必ず時価に等しいとは限らず、乖離する可能性は考えられます。

    建物の評価方法

    建物の評価方法には、積算法と収益還元法の2種類があります。それぞれの違いを解説します。

    積算法

    積算法とは、建物の再調達原価や法定耐用年数などを考慮して評価する方法です。具体的には以下の計算によって算出されます。

    積算法の評価額=再調達原価×延床面積×残存年数÷法定耐用年数

     
    再調達原価とは、その建物を再調達する場合に想定される価格のことで、路線価や類似物件の価格など、さまざまな視点から計算されます。

    法定耐用年数は、建物の用途や構造ごとに定められています。マンションやアパートといった住居用の建物の耐用年数については以下をご覧ください。

    【住居用建物の構造ごとの法定耐用年数】

    構造 法定耐用年数(年)
    木造・合成樹脂造 22
    金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み4mm超) 34
    金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み3mm超、4mm以下) 27
    金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み3mm以下) 19
    鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 47

    参考:国税庁 – 主な減価償却資産の耐用年数表

    木造・合成樹脂造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造は47年というように、構造のグレードが上がるほど耐用年数が上がっていきます。また、残存年数とは法定耐用年数から築年数を引いた数値のことです。

    収益還元法

    収益還元法とは、不動産の収益性に着目した評価方法です。収益還元法は2種類あり、一定期間の収益を還元利回りによって還元することにより収益価格を算出する「直接還元法」と、将来発生する収益と売買価格を、その発生時期に応じて現在価格で割り引くことで価格を求める「DCF法」に分かれます。DCF法の計算式はやや複雑ですので、ここでは直接還元法の計算式を紹介します。

    直接還元法の評価額=年間の収益÷還元利回り

     
    年間の収益とは、不動産の家賃収入から経費を引いた収益を表します。また、還元利回りとは「キャップレート」とも呼ばれ、物件の資産価値を評価する手法の1つで、物件から得られる利益と将来の利益を算出する際の指標となる数値となります。

    還元利回りの計算は難解ですので、具体的な計算式についてここでは割愛しますが、類似不動産との取引事例を比較して求める方法が一般的であり、大体5~8%程度が平均値となっています。

    ◆還元利回りに関する詳しい解説は、以下の記事を参考にしてください。
    キャップレート(還元利回り)の基本と、自分で予想する方法

    積算法と収益還元法の使い分けについて

    積算法と収益還元法は、どちらがより正確というわけではないうえ、それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況に応じて使い分ける必要があります。基本的に、積算法は不動産の所有者が価格を推定するときに使うことが多い一方、収益還元法は不動産経営において使うことが多くなっています。

    したがって、不動産経営を考えている人は、収益性に着目した評価方法である収益還元法で計算してみることをおすすめします。

    ◆積算法の考え方、計算法、シミュレーションなどを紹介しています。
    積算価格とは|計算方法とシミュレーション、収益価格との違い

    ◆収益還元法の特徴や計算法については、こちらの記事をご覧ください。
    収益還元法とは|積算法との違いや計算式をわかりやすく解説

    担保評価が低い=融資が不利になるわけではない

    担保評価は不動産の融資額に影響します。しかし、担保評価が低いことによって融資条件が不利になるとは限りません。

    重要であるのは、借り入れをする金額は担保評価額に対してどの程度の割合なのか、ということです。担保評価額に対して借り入れをする金額の割合が少なければ、金融機関のリスクは低減されます。したがって、担保評価額が低いことは、必ずしも融資条件を不利にすることに結びつきません。

    また、ローンの審査では担保評価以外のさまざまな要素が考慮されます。特に、年収や勤務先、家族構成など、個人の属性が高い人は金融機関の信用を得やすいため、審査では有利になる可能性が高いといえます。

    不動産担保ローンを利用する流れ

    不動産担保ローンを利用するにあたり、ここでは準備するものや、ローンを開始するまでの期間について説明します。以下にローンを利用する場合の流れをまとめます。

    相談、申し込み

    まず、金融機関へ相談、申込みを行うことから開始します。相談の段階では、審査に必要な書類や審査期間、金利などを詳しく尋ねるようにしましょう。申込み方法は金融機関によって異なりますが、ホームページからの申込みと、電話による申込みのどちらにも対応していることが多いです。

    不動産担保ローンの申込みは「仮申込み」と「本申込み」の2段階に分けて行われるのが一般的です。ただし、仮申込みは、正式に審査の申込みをする前に融資が下りそうかどうか事前に確認しておきたいといった利用者の要望に応えるために金融機関が設けていることから、相談も兼ねているものになります。

    また、住宅ローンなどの審査ではほとんどの場合、仮審査の完了後に本審査という流れになりますが、不動産担保ローンでは仮申込みをローンの仮審査と位置づけるケースがあります。この場合、仮申込みが完了して本申込みを行えばすぐに本審査へと移ることができるため、融資を受けるまでの期間を短縮できます。

    不動産担保ローンの本申込で提出する書類は以下の通りです。金融機関によって異なることもあるため事前に確認しておく必要はありますが、参考までに一般的に必要となる書類を以下にまとめます。

    ・不動産登記簿謄本、公図、地積測量図
    ・売買契約書、重要事項説明書
    ・本人確認書類
    ・源泉徴収書
    ・実印・印鑑登録証明書
    ・収入証明書 など

     
    このうち、不動産担保ローンにおいて重要な書類は「不動産登記簿謄本、公図、地積測量図」などの担保評価をするための書類です。ただし、これも金融機関によって必要書類の種類が異なることがあります。仮申込み後にどのような書類が必要なのかが分かりますが、中には入手するのに時間がかかるものもありますので、漏れがないよう準備するようにしてください。

    審査

    本申込みが完了すると、金融機関の審査の段階に移ります。審査では、不動産の担保評価額、個人の属性の精査が行われ、融資可能な金額・融資期間・金利などの詳細が正式に決定されます。

    基本的には、仮審査(仮申込み)の段階でどのくらいの融資が受けられるか、ある程度の目安が分かりますが、担保評価が予想よりも低かった場合や、利用者に他の借金(住宅ローン、車のローンなど)があり返済能力に問題があると判断された場合は、想定通りの融資を受けられない可能性があります。そのため、ローンを申込む場合は、審査前にできるだけ信用力を高める努力をすることをおすすめします。

    たとえば、担保評価や個人の属性は審査前に改善するのは困難ですが、借金の支払いに関しては、まとまった資金が残っているのならば事前に返済しておくほうが望ましいといえます。審査の結果までは1~3週間ほどを要するのが一般的ですが、金融機関によっても違いがあるため、事前に問い合わせて確認しておくようにしましょう。

    契約

    本審査を通過して、金融機関から融資金額や金利などの詳しい説明を受けたら、いよいよ正式に契約を結ぶことになります。契約時に提出する書類は、審査時に提出したものと重複するものもありますが、一般的に必要となる書類は以下の通りです。

    ・住民票
    ・印鑑証明書
    ・不動産の登記簿・謄本
    ・不動産の評価証明書
    ・審査後に金融機関から受け取る書類

     
    契約時には、印紙税・登記費用・金融機関の事務手数料などがかかる点を覚えておきましょう。特に、事務手数料は融資額によってはかなり高額になる傾向があります。場合によっては数十万円かかることもあるため、事前準備が必要です。

    契約書を取り交わす段階で、金融機関の担当者から詳しい説明を受けることになります。この際、契約後のトラブルやクレーム防止のため、各項目を一つ一つ読み上げて丁寧な説明がなされるのが基本ですが、担当者によっては細かい事項を割愛する場合があるため、自分の目で確認する意識を持つようにしてください。

    担保評価の仕組みを理解しよう

    不動産担保ローンは他のローンとは少し異なり、不動産の担保評価がもっとも重視される傾向にあります。そのため、本記事で紹介したような担保評価が決まる仕組み、計算方法などをできるだけ理解したうえで利用するようにしましょう。それに加え、個人の属性や返済能力もローンの審査には大きく影響するため、自分自身の信用力を意識することも大切です。

    また、実際にローンを組む場合の流れや必要書類は金融機関によって異なるため、事前によく確認しておくようにしてください。必要書類の中には取り寄せに時間がかかるものもあるので、スケジュールに余裕を持って進めていくようにしましょう。

  • 不動産投資の返済比率|高い・低いによるリスクと計算例

    不動産投資の返済比率|高い・低いによるリスクと計算例

    投資家が不動産投資をする場合、金融機関のアパートローンなどを利用して物件の購入代金を用意するのが一般的です。その際、家賃収入に対してどのくらいの割合の金額を毎月返済していくのかが重要なポイントとなります。この記事では、返済比率の計算方法やシミュレーションについて紹介します。

     

    オーナーのための家賃保証
    「家主ダイレクト」

    家主ダイレクトは、27万人を超えるオーナーに利用されている「オーナーが直接使える」家賃保証サービスです。

    • 賃貸経営をしているけど、なぜか手元にお金が残らない
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    不動産投資の返済比率とは

    不動産投資の返済比率とは、収益物件から得られる年間の家賃収入における、アパートローンなどの年間返済額の割合です。不動産投資で得られる収益のうち、どのくらいの割合を金融機関へ返済するのかを示すもので、返済比率が低いほどゆとりのある賃貸経営を行えることを表します。返済比率が低ければ手元に残る収益は多くなるため、空室や修繕など、突発的に発生するリスクにも対応できるからです。

    反対に、返済比率が高いということは、収入におけるローン返済額の割合が高いということですので、月々のキャッシュフローに余裕がなくなります。そのため、突然大きな支払いが発生すると、最悪の場合は返済金を滞納してしまうというリスクを抱えています。

    返済比率の計算方法

    返済比率の計算方法は以下の通りです。

    返済比率(%)=年間のローン返済額 ÷ 満室時の年間家賃収入額 ✕ 100

     
    ここで注意したいのは、返済比率は「収益物件を満室で経営している場合」で計算されるということです。そのため、考えていた金額よりも実際に手元に入る家賃収入額が少なくなることはあり得ます。

    また、返済比率の計算にはローン返済額を算入しますが、物件を購入する前の状態では金融機関への金利や返済期間などは確定していません。そのため、ローン返済額を具体的に割り出したいときには、各金融機関が提供しているローンシミュレーターを使用すると良いでしょう。わざわざ金融機関まで出向かなくても、インターネットで毎月のローン返済額を簡単に計算することができます。必要な情報は「物件価格」「自己資金額」「返済期間」「金利」などです。

    返済比率は算出されたローン返済額を年間家賃収入で割ることにより計算できますが、この計算式の通りに必ずしも満室経営になるとは限りませんので、空室が出た場合でもゆとりのある経営を行なうためには「空室数も考えたうえでの家賃収入」で計算することをおすすめします。

    ◆不動産投資の空室率については、こちらの記事をご覧ください。
    不動産投資の空室率とは?データ推移と空室対策アイデア例

    不動産投資の標準的な返済比率は「50%以下」

    不動産投資は金融機関から融資を受けて行うのが一般的ですが、家賃収入に対して返済比率が高すぎると収入のほとんどが返済金になるため、ローンの返済が困難になってしまいます。したがって、家賃収入に見合った返済比率に設定することが必要です。

    一般的に、不動産投資における理想的な返済比率は「40~50%以下」と考えられています。理由としては、返済比率が低いほど安定的な不動産経営を行うことができるからです。万が一、空室が発生して損失が10~20%出たとしても、40~50%以下の返済比率に抑えておけば手元に30%程度は残ることになります。

    不動産経営には、管理会社へ支払う管理費や固定資産税などの各種税金、建物や設備機器の修繕費など、さまざまなランニングコストがかかります。このように何かと出費がありますが、返済比率を50%以下にしておくことで余裕のある不動産経営を行える可能性が高くなります。

    ◆不動産経営の経費については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
    マンション経営の経費一覧|計上できない項目や節税のコツ

    返済比率が高い場合の計算シミュレーション

    返済比率が高いとキャッシュフローに余裕がなくなることはすでに説明しましたが、返済比率を高くすると返済期間が短くなることから、返済金額をあえて多めに設定するオーナーもいます。ただし、無理な金額で返済していくと、空室などのリスクが発生した場合に返済金を滞納してしまうことが考えられます。そこで、ここでは返済比率が高い場合のシミュレーションをしてみましょう。

    返済比率60%のシミュレーション

    家賃収入に対するローンの返済比率を60%にし、シミュレーションをしてみます。

    【返済比率60%の場合】

    毎月の家賃収入(満室時) 100万円
    毎月のランニングコスト(家賃収入の20%) 20万円
    空室による損失(家賃収入の15%) 15万円
    毎月のローン返済金(家賃収入の60%) 60万円
    手元に残る金額 5万円

     
    返済比率60%でシミュレーションをすると、満室時の毎月の家賃収入が100万円だとしても、そこからランニングコスト・想定される空室損・ローン返済金を差し引くと、手元に残る金額はわずか5万円になってしまいます。これは満室時の家賃収入に対して5%の割合です。この場合、修繕費など突発的な費用が発生した場合には、たちまち赤字経営になってしまいます。

    この結果から、家賃収入の半分以上を返済する「返済比率60%」は、想定外の支出が発生した場合には対応することが非常に難しいというリスクを抱えていることが分かります。

    返済比率が高いことのリスク

    家賃収入に対してローンの返済比率が高くなると、さまざまなリスクを引き起こします。ここでは代表的な3つのリスクについて解説します。

    急な支出に対応できない

    第1のリスクは「急な支出に対応できない」ことです。すでに説明してきた通り、返済比率が高いと家賃収入の多くを返済に充当するため、手元に残る金額は少なくなります。これでは安定したキャッシュフローで経営することができません。

    たとえば「給排水配管の修繕費が発生した」「貸室の流し台が水漏れするため交換することになった」など、賃貸経営には突発的な支出があるものです。特に修繕費は高額になることが多いので、ゆとりのあるキャッシュフローが必要です。ほとんど余裕のないキャッシュフローで経営をしていると、想定外の支出が発生した場合に対応できない可能性があります。

    想定以上の空室に対応できない

    第2のリスクは「想定以上の空室に対応できない」ことです。シミュレーションでは空室損を15%と仮定して計算していますが、転勤など入居者の都合で急に退去をすることもあるため、想定以上の空室が発生する可能性を考えておく必要があります。すぐに入居者を募集したとしても、立地条件によってはなかなか入居が決まらない場合があるので、マイナス分が長引くことも考えられます。

    このように空室が続いても、毎月の返済額が変わることはありません。そのため、返済やランニングコストの支払いなど、資金繰りに困る可能性は考えられます。

    金利上昇リスクに対応できない

    第3のリスクは「金利上昇リスクに対応できない」ことです。アパートローンを変動金利で借り入れた場合は、金利情勢の変化によって金利が変動します。

    変動金利を選ぶ理由として一般的なのは、ローンの金利を設定するときに固定金利よりも安かった、というケースです。しかし、金利情勢には波があるため、運用をしている間に金利が上がる可能性は十分考えられます。そうなると、元本がなかなか減らずに返済額が多くなってしまうというマイナス現象が現れることになります。

    変動金利の場合、半年ごとに金利の見直しが実行されます。変動金利から固定金利への移行は基本的に可能ですが、変更すると返済負担が大きくなる可能性があるため、借り換えをする場合はシミュレーションをしてから金融機関を選びましょう。

    返済比率が低い場合の計算シミュレーション

    返済比率が60%などと高い場合についてのリスクは、これまでの内容で理解できたのではないでしょうか。ただ、返済比率が低いというのもまったくリスクがないわけではありません。ここでは、返済比率が40%と低い場合のシミュレーションを見ていきましょう。

    返済比率40%のシミュレーション

    家賃収入に対するローンの返済比率が40%だと、以下のシミュレーションになります。

    【返済比率40%の場合】

    毎月の家賃収入(満室時) 100万円
    毎月のランニングコスト(家賃収入の20%) 20万円
    空室による損失(家賃収入の15%) 15万円
    毎月のローン返済金(家賃収入の40%) 40万円
    手元に残る金額 25万円

     
    返済比率40%でシミュレーションをすると、満室時の毎月の家賃収入が100万円の場合、最終的に手元に残る金額は25万円となり、ある程度まとまった金額となります。満室時の家賃収入の25%も残ることになるため、キャッシュフローにかなり余裕が出るといえます。

    中には、不動産投資をする際の理想的な返済比率=40%という考え方もありますが、実際のところ40%の返済比率を実現できる物件はそう多くはありません。したがって、現実的には50%のラインが適切な返済比率とされています。ちなみに返済比率が50%の場合、手元に残る金額は15万円で、家賃収入の15%となります。

    返済比率40%を設定すると手元に残る金額が大きいのはメリットですが、そのぶん返済期間が長くなりますのでリスクはあります。返済比率は低ければ低いほど良いというわけでもないので、返済比率を設定する場合にはさまざまなリスクと照らし合わせながら決めることが重要です。

    返済比率が低いことのリスク

    返済比率が低いと、返済金額が少ないため安定した経営を行うことができますが、その反面で「返済期間が長期化する」というリスクを抱えています。そして、返済期間が長くなれば、そのぶん多く利息を支払うことになりますので、総返済額は増えることになります。

    また、そもそも低い返済比率を維持するのは難しいという点もあります。賃貸経営には波があり、必ずしも満室経営が確約されているわけではありません。空室が続けば家賃収入は減るため、当然ながら実際の収入に対する返済比率は高くなってしまいます。そのため、満室時での家賃収入を基にして返済比率を低く設定しても、実際に維持するのは難しいといえるのです。

    加えて、アパートローンを借りる際には「満70歳未満」などの年齢制限があります。中高年の年齢で借り入れをすると返済期間が短くなりますので、返済比率を低くすることはそもそも難しいという場合もあります。

    不動産投資の返済比率を下げる方法

    返済比率が今よりも低くなればキャッシュフローはより安定し、余裕のある不動産経営が実現する可能性が高まります。ここでは、不動産投資の返済比率を下げる方法について解説していきます。

    自己資金額を増やす

    金銭的に余裕のある人におすすめなのが、自己資金額を増やすことです。収益物件を購入するときに、頭金として自己資金を多めに入れると、融資額が少なくなるため返済比率を下げることができます。ローンの融資額が少ないほど返済期間は短くなり、元金にかかる金利も減りますので、毎月のローン返済額を低くすることが可能です。

    しかし、経済的に余裕のない人が行うと資金ショートを起こす可能性がありますので、おすすめできません。たとえば、多額の修繕費や空室による家賃減収が発生した場合、ローンの返済がきつくなることもあり得るからです。

    また、自己資金を多く入れるとレバレッジ効果(小さい資金で投資効果を上げ、さらに収益性を高める)が小さくなってしまうことにも注意しましょう。たとえば2,000万円の自己資金がある場合、借り入れをしなければ2,000万円の物件しか購入できません。しかし、2,000万円を借り入れできれば4,000万円の物件を購入できます。それぞれの物件の利回りが同じ8%だとしても、借り入れをしたほうが年間収益から年間利息額を引いた実質利益は高くなります。

    したがって、アパートローンなどを借りて家賃収入の多い物件を購入したほうが収益は高くなることが考えられます。

    返済期間を延長する

    返済期間を延長することにより、毎月の返済額を減らして返済比率を下げる方法もあります。しかし、返済期間が低い場合のリスクの箇所でも述べましたが、返済期間を延ばすと金利も増えてしまうため、返済総額が多くなってしまうのはデメリットといえます。

    また、人によっては金融機関に認めてもらうことができない可能性があり、誰もが返済期間を延長できるとは限りません。担保となっている物件の状況により断られる可能性があります。どうしても返済期間を延長したいという場合は、ほかの金融機関に借り換えを相談してみるのも良い方法です。

    繰り上げ返済する

    自己資金に余裕がある人は、前倒しでローンを返済する「繰り上げ返済」をするのをおすすめします。繰り上げ返済をすると毎月の返済額を減らせるため、返済比率を下げることが可能です。元金も少なくなるので利子が下がり、総返済額を減らせるようになります。

    ただし、金融機関によっては、繰り上げ返済をする際に手数料が発生する場合があるので確認が必要です。手数料は金融機関により違いがあるのできちんと調べておきましょう。

    なお、自己資金に余裕がない人は繰り上げ返済をすると手持ち資金がなくなってしまうため、よく検討してから実行するようにしてください。不動産経営は建物の修繕費などで思わぬ出費が発生することが多いため、ゆとりのあるキャッシュフローが理想といえます。

    金利を下げる

    ローンを借り入れている金融機関と交渉して金利を下げるのも良い方法です。金利が下がれば毎月の返済額が少なくなるため返済比率は下がります。

    ただし、金利についてはローンを組んでいる人の属性や信用度により違いがあります。「資産家である」「過去に不動産取引を多くしている」「社会的地位が高い」などに該当する人は、金融機関が交渉に応じてくれる可能性があります。しかし、不動産取引の実績が少ない人や勤務年数が3年以下の人にとってはハードルが高いといえます。

    それなので、購入する時点で複数の金融機関にローンの審査を申し込み、その中で金利が低い金融機関から借り入れをすることが現実的だと考えられます。不動産は高額なため返済期間が長くなるのは一般的であり、総返済額に占める金利の割合は決して少なくありません。金利を見直すことにより収益が上がることも期待できます。

    不動産投資の返済比率は50%が理想的

    不動産投資をする際に利回りと同じくらいに重要なのが、家賃収入に対するローンの返済比率です。返済比率が高すぎると、手元に残る金額が少ないため安定した経営をしにくいですが、低すぎても返済期間が長期化するなどのリスクがあります。そのため、50%程度の返済比率が「無理なく」「効率的に」賃貸経営ができる理想的な数値といえるでしょう。不動産投資をする際には、利回りだけでなく返済比率にも注意して運用計画を立てるようにしてみてください。

  • 不動産投資はキャッシュフローが成功のカギ!基本を理解しよう

    不動産投資はキャッシュフローが成功のカギ!基本を理解しよう

    キャッシュフローとは、「入ってくるお金」と「出ていくお金」の流れのことを指します。不動産投資では、賃料収入でローンや経費などの支払いが可能かを確かめるためにも重要な考え方です。計算上で利益が生じていても、支払いが必要な時に手元にキャッシュがなければ、不動産投資を継続していくことはできません。本記事でキャッシュフローの考え方を理解して、安定した不動産投資を目指してみてください。

     

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    不動産投資にキャッシュフローが重要な理由

    不動産投資では、さまざまな場面でまとまったキャッシュが必要になります。その際に手元に必要なキャッシュがなければ、不動産投資を継続することはできなくなります。そこで不動産投資ではキャッシュフローを重視した運用を行う必要がありますが、その具体的な理由について以下で説明しましょう。

    キャッシュフローに余裕があると不動産運用が滞らない

    不動産投資には、空室リスクや物件の修繕の必要性など、一定の不確実性が生じます。

    不動産投資にあたってローンを利用している場合には、たとえ空室の期間であっても支払いを行う必要がありますが、この期間のキャッシュフローはマイナスになってしまいます。もしこの際にキャッシュに余裕がなければ、少しでも早く入居者を見つけるために極端な家賃の値下げをしなくてはないケースや、最悪の場合にはローンの支払いが滞って物件を手放さなくてはならないケースも出てくるかもしれません。

    また、物件の魅力を高めて入居率を維持するためには、リフォームなどのように一時にまとまった額の支出が効果的なこともあります。ただし、リフォームなどによる効果はある程度の期間に渡って回収されていくものなので、リフォームした当初はキャッシュフローがマイナスになるケースが多く見られます。

    このように、不動産投資におけるキャッシュの回収は長期的に考えていくことで、トータルでの利益はより大きくなる確率が高まるものですが、その過程でキャッシュが一時的にマイナスになる可能性があるのです。そのような場合であっても、キャッシュフローに余裕があれば不動産運用が滞る心配はないため、トータルで利益が最大になる選択肢を選ぶことができるといえます。

    キャッシュフローに余裕があるとプライベートのお金を使わずに済む

    上記のようにキャッシュアウトの必要が生じた際、不動産投資によるキャッシュフローに余裕がなければ、給与収入や不動産投資以外による貯金など、プライベートのお金で対応するケースが生じることがあるかもしれません。しかし、不動産投資によるキャッシュアウトは、できれば不動産によるキャッシュフローの流れの中で対応したいものです。

    不動産投資は本来、利益を生み出して生活をより向上させるために行っているはずです。ところが、不動産投資によって生活資金に影響が出てしまうのであれば本末転倒です。

    また、生活資金と不動産投資のキャッシュを混同してしまうと、不動産投資による純粋なキャッシュフローが把握しにくくなるというデメリットもあります。不動産経営によるキャッシュフローに余裕があれば、プライベートのお金を使わずに済むため、このような心配がなくなります。

    物件を売却する際に有利になる

    多くのキャッシュフローを生み出す物件は、物件を売却する際に有利に売却できる可能性があります。収益物件では、その物件から生み出されるキャッシュフローを基にした評価額も算定するため、不動産投資家はそれを参考にして物件を購入するかどうかの意思決定をするのが一般的だからです。

    その物件を購入することで多くのキャッシュフローを手にすることができると考えれば、より高い価格を提示されているとしても購入したいと考える人は少なくないでしょう。ですから、不動産投資におけるキャッシュフローは、不動産を売却する局面でも大きな意味を持っています。

    ストックされたキャッシュの使い道について

    では、不動産投資において、ストックされたキャッシュは具体的にはどのような用途に使われるのでしょうか?

    設備の修理・交換費用に充てられる

    入居者が入居し部屋で生活をしていれば、故障や経年劣化などが原因で、一定の期間ごとに設備の修理・交換が必要になります。たとえばエアコンの耐用年数は5~10年ほど、給湯器の耐用年数は10~15年ほど、トイレの部品などは5年で寿命となるケースもあります。

    それぞれの品質や使用の仕方によって修理や交換のタイミングは差がありますが、賃貸経営にはこれらのキャッシュアウトは不可欠な費用ですので、家賃収入を得るための経費として、ストックされたキャッシュの中から支払うべきものとなります。

    金利が上昇した場合に対策できる

    物件の購入費用をローンで賄っている場合には、金利の支払いについても注意が必要です。不動産の購入費用は高額であるうえ、ローンの借入期間は長期になることから、低金利であってもトータルでの利息はある程度高額になります。

    ローンの支払い方法に固定金利型を選択していれば、金利が変動してもローンの支払額に変わりはありませんが、変動金利型を選択している場合には、金利の上昇によってローンの支払額は大きく増える可能性があります。日本では現在、低金利の時代が長く続いているため変動金利での借り入れを利用している割合が高くなっています。同じ金利水準の時点では、固定金利型よりも変動金利型のほうが金利を低く設定できるからです。

    しかし、不動産投資は長期に及ぶものですし、アメリカの中央銀行が利上げに動き始めていることなど不確実性を考えるなら、金利が上昇した場合の対策も考えておく必要があります。ストックされたキャッシュがあれば、繰り上げ返済を行うにしても、ローンの借り換えを行って返済計画を見直すにしても、柔軟な対応を取ることができるようになるでしょう。

    空室リスクに対応できる

    キャッシュに余裕があれば不動産運用が滞らないと説明したように、ストックされたキャッシュがあれば空室リスクにも対応できるので、安定した経営が行えます。賃貸経営では入居者の入れ替わりは必ず起こりますし、その際に空室が生じることは避けられません。

    ローンの支払いのためには、できる限り早めに次の入居者を入れるために家賃を下げて募集することが簡単ではありますが、一度家賃を下げてしまうと家賃値下げによる将来的なキャッシュの減少が続くことになり、トータルでのキャッシュは減少する結果になってしまいます。

    余裕をもって入居者の募集を行うためにも、ストックされたキャッシュは心強い存在であるといえるでしょう。

    税金の支払いに対応できる

    不動産を所有していると、毎年4月初め頃に市町村から固定資産税の支払い通知が届きます。賃貸経営においては、所有している物件の固定資産税の支払いは不可欠な経費として発生しますから、このような税金の支払いも賃貸経営によってストックされたキャッシュから支払うべきものとなります。

    支払いは年に1回、もしくは数回となりますが、支払いに備えて賃料収入からストックしておくことを忘れないようにしましょう。

    不動産投資|キャッシュフローの計算方法と計算例

    ここでは、不動産投資におけるキャッシュフローの計算方法と計算例を解説します。不動産投資を行うにはキャッシュフローは大変重要なポイントとなりますので、理解しておきましょう。

    キャッシュフローの計算式

    キャッシュフローとはお金の流れを指す言葉ですが、不動産投資においてもキャッシュフローの考え方は身に付けておく必要があります。不動産投資におけるキャッシュフローは以下の計算式で計算されます。

    不動産投資におけるキャッシュフロー = 家賃収入 -経費 -ローンの返済額

     
    家賃収入から、賃貸経営のために支出した必要経費とローンの返済額を差し引いて、手元に残るキャッシュを計算します。ここで差し引く経費とは、管理費・修繕費・保険料・税金など、現実にキャッシュアウトしたものです。

    キャッシュフローの計算例

    以下のケースで、1年間のキャッシュフローのシミュレーションをおこなってみましょう。

    5,000万円を借り入れ
    表面利回り(※1)8%
    経費率2%
    支払い利息の利回り2%:元利均等額払い(※2)

     
    表面利回りというのは、投資した金額に対して得られる収入の割合のことで、必要な経費を控除する前の利回りを指します。5,000万円の投資に対して8%の表面利回りという場合には、400万円の家賃収入を想定しているということです。

    ローンの返済期間が35年のケース

    年間家賃収入:約400万円
    必要経費  :約80万円
    ローンの返済額:約200万円
    キャッシュ残:約120万円

     
    ローンの返済期間が20年のケース

    年間家賃収入:約400万円
    必要経費  :約80万円
    ローンの返済額:約306万円
    キャッシュ残:約14万円

     
    ローンの返済期間が15年のケース

    年間家賃収入:約400万円
    必要経費  :約80万円
    ローンの返済額:約389万円
    キャッシュ残:約-69万円

     
    ローンの返済期間が35年のケースでは、年間のキャッシュ残高は約120万円となりますが、返済期間が20年のケースではキャッシュ残高は約14万円に減り、返済期間が15年のケースでは約69万円のマイナスとなってしまいます。

    返済期間が35年のケースでは毎年十分なキャッシュの蓄積ができるので、余裕を持った賃貸経営が可能であると考えられます。返済期間が20年のケースではキャッシュの残高が少なくなるので、イレギュラーな事態が起こった時に対応できるかどうかは、少々心もとないといえるでしょう。返済期間が15年のケースでは、賃貸経営のマイナスをほかの収入で埋めることができなければ経営を継続することはできません。

    ここではローンの返済期間の長さを3つ設定し、キャッシュフローがどれだけ影響を受けるかシミュレーションしてみましたが、その他さまざまな要因によってもキャッシュフローは影響を受けることが考えられます。不動産投資を始める際には、それぞれの条件によるキャッシュフローの違いを十分検討して、最善の判断をしたいものです。

    ◆1 表面利回りについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
    表面利回りと実質利回りの違い、計算方法、シミュレーション

     

    ◆2 元利均等額払いについて詳しく知りたい方は、以下記事の見出しにある「不動産投資ローンを組むときに大切な4つのポイント」をご覧ください。
    不動産投資ローンの基本を解説!審査や種類、借り換えなど

    不動産投資|キャッシュフローと帳簿上の利益の違い

    繰り返しとなりますが、キャッシュフローとは、その名前のとおりキャッシュ(お金)の流れのことです。現金がいくら入ってくるか・支払いがいくら必要か・今いくら手元にあるか・将来いくら残るのかといったことを表しているのがキャッシュフローです。

    賃貸経営を継続していくためには、必要な支払いを滞らせるわけにはいきませんので、こういったキャッシュフローの考え方は大変重要な視点となります。

    これに対して帳簿上の利益とは、収入に対してかかった経費を差し引いて「結果としてどれくらいの儲けがあったのか?」を計算するものです。不動産投資において帳簿上の利益を計算する目的は、1年間の利益を算定して投資の成果を知るということもありますが、利益を計算して納税額を確定するということが主になります。

    では、帳簿上の利益とキャッシュフローには具体的にどのような違いがあるのでしょうか?また、両者に違いが生じるのはなぜでしょうか?

    まず、帳簿上の利益の計算式は以下になります。

    帳簿上の利益 = 家賃収入 -経費(支払利息を含む) -減価償却費(※)

     
    ※減価償却費とは、建物を取得した際の費用を効果の及ぶ期間に渡って費用として計上し、収益から差し引くための仕組みです。現実には不動産の取得費用は毎月のローンの支払い時にキャッシュアウトするのですが、固定資産税などの税金の計算上は、経費として計上できる物件の取得費用は現実のキャッシュアウトとは異なる定めが設けられています。

    ですから、帳簿上の利益を計算する際にはローンの支払額を差し引くことはできません。代わって、建物の取得費用を基に法律で定められた方法で計算した減価償却を差し引くことになります。

    一方、キャッシュフローの計算式は以下のようになりますから、キャッシュフローと帳簿上の利益の大きな違いは、この「減価償却費」と「ローンの支払額」の計上の影響によることが分かります。

    不動産投資におけるキャッシュフロー = 家賃収入 -経費(支払利息以外) -ローンの返済額

     
    ただし注意が必要なのは、帳簿上の利益を計算する際には、支払い利息を経費として差し引いている点です。それに対して不動産投資におけるキャッシュフローの計算では、ローンの返済額の中に支払利息を含めているので、ここで差し引かれる経費には支払利息が含まれません。

    ですので、少々ややこしいのですが、「支払利息を除くローンの返済額」と「減価償却費」の差によってキャッシュフローと帳簿上の利益に違いが生じている、ということができます。

    このように求められる金額に違いが生じるのは、先ほども説明したように、不動産投資を継続するための資金繰りのためなのか、税金を計算するためなのか、それぞれ計算の目的が異なるからなのです。

    不動産投資のキャッシュフローを増やす方法

    これまでの説明で、不動産投資にはキャッシュフローが非常に重要であることが理解できたのではないでしょうか。では、不動産投資のキャッシュフローを増やすにはどうしたらよいのでしょうか?本章ではキャッシュフローを増やすために有効な方法について解説していきます。

    頭金を多く入れる

    月々のローンの返済額がキャッシュフローに大きな影響を与えることはすでに説明しましたが、ローンの返済額を抑えるためには、ローンの返済期間を延ばす以外にも、頭金を多く入れることで借り入れを減らすという方法も考えられます。

    不動産購入時に手元のキャッシュに余裕があるならば、頭金を多く入れることで月々の返済額を減らすことができるうえ、金利の負担も減ることになりますので、キャッシュフローの改善に大きく貢献することが期待できます。

    低い金利のローンを選ぶ

    ローンの金利もキャッシュフローには大きく影響してきます。本記事のシミュレーションで返済期間35年のケースを紹介しましたが、同じケースでも金利が5%になると、年間の返済額は約305万円に増えてしまいます。反対に、1%になれば返済額は約170万円に減少します。キャッシュフローを改善するには、少しでも低い金利のローンを選ぶことがカギといえます。

    返済期間が長いローンを選ぶ

    賃貸経営では月々のローンの返済額がキャッシュフローに大きな影響を与えるため、キャッシュフローを良好にするにはローンの返済期間をできるだけ長くすることが効果的です。ただし、返済期間が長くなればその分トータルで支払う利息も多くなります。返済期間が15年の場合、トータルの利息は約83.7万円ですが、20年であれば約111.6万円、35年であれば約200万円となります。

    全体としてのキャッシュに余裕があるならば、返済期間は短いほうがトータルでの利益は大きくなるので、毎年のキャッシュフローの安全性とのバランスを考慮したプランを立てることが大切です。

    借り換え、繰り上げ返済をする

    借りているローンの金利が高い場合には、借り換えや繰り上げ返済をしてより低い金利のローンに乗りかえる、もしくは繰り上げ返済をすることでローンの返済の負担を軽くする方法もあります。

    ただし、借り換えや繰り上げ返済には手数料などの新たな費用が発生しますので、それらを考慮したり、金利水準などから最適なタイミングを図ったりするなど、慎重に検討することをおすすめします。

    新築物件ではなく中古物件にする

    キャッシュフローを重視する観点からは、新築物件ではなく中古物件に注目することも一つの選択です。中古物件だと経過年数によっては大幅なリフォームや修繕が必要な場合もありますが、その費用を差し引いても割安で購入できる物件は多数あります。新築物件と比較すれば購入費用が少なくて済むため、毎年の返済費用が抑えられ、良好なキャッシュフローが維持できる可能性が高くなります。

    ただし、中古物件はある程度、耐用年数が経過しているため、新築物件に比べて残りの使用可能年数が短くなります。融資を受ける際にもその分資産価値は低く評価されますので、十分な額の融資を受けられないケースや、融資期間が短く設定されるケースがあります。

    金融機関からの融資を受けて物件を購入する際には、有利な条件で融資が受けられる物件であるかどうかも判断の基準にすることが必要です。

    家賃を下げないようにする

    良好なキャッシュフローを維持するには、出ていくお金を少なくすることも重要ですが、入ってくるお金であるキャッシュインを少しでも増やす工夫も大切です。これから物件を選ぶのであれば、入居者の利便性を考えた物件選びをすることで、より高い賃料収入が得られ、空室リスクを減らすことが可能になります。

    すでに購入済の物件であれば、

  • まめに修繕や清掃を行い良好な管理状態を保つ
  • 設備や物件自体が老朽化した際には大幅なリフォームを実施する
  •  
    など、物件の魅力を維持することで家賃を下げないようにすることが大切です。

    委託管理先の見直し、自主管理の検討

    不動産投資初心者であれば、管理会社を積極的に利用するのも一つの方法でしょう。ただし、管理会社を利用するには継続的な管理手数料が必要です。会社によってサービス内容や管理手数料は大きく異なるので、場合によっては委託管理先の見直しが必要なケースもあります。

    なお、コスト削減とキャッシュフロー改善には、自主管理という方法も有効です。自主管理とは、賃貸経営にあたって管理会社を利用せずにオーナーが管理業務を行う方法です。自主管理には手数料はかかりませんが、

  • 入居者の募集
  • 賃料の回収
  • クレーム処理
  •  
    など、すべての業務をオーナーがこなさなければならないため、時間と手間がかかるのがデメリットとなります。

    そこでこのデメリットを補うための一つの対策としておすすめしたいのが、家賃保証会社を利用することです。ここでは「家主ダイレクト」というサービスを例に紹介します。

    家主ダイレクトは、自主管理オーナーに向けて、入居者募集のサポートや、家賃保証による滞納リスク解消、孤独死保険などさまざまな保証を行い、オーナーの賃貸経営を支援する家賃保証サービスです。これらのサービスの利用料は入居者側が負担するため、オーナーには経済的な負担が発生しません。

    キャッシュフローの改善は賃貸経営成功のカギを握る大切なポイントですので、ぜひ一度自主管理の検討をしてみてはいかがでしょうか?詳しい内容は以下の資料をご覧ください。

    ▶「3分でわかる家主ダイレクト」の資料をダウンロードする

    不動産投資の成功には、キャッシュフローを理解することが不可欠

    不動産投資を行うためには、キャッシュフローを理解することは不可欠です。繰り返しになりますが、キャッシュフローが滞れば投資を継続することはできなくなりますし、手元のキャッシュが少なくなれば取りうる選択肢が限られてしまい、最善の方法を取ることができなくなります。反対にキャッシュに余裕があれば、さらに利益を増やすための選択肢が増えることになります。

    ただし、不動産投資の目的は、一時点のキャッシュを最大化することではなく、あくまでもトータルでの利益が最大になることです。キャッシュフローへ着目するのは、そのための手段です。そういった点を含めてキャッシュフローを理解することで、この記事を不動産投資の成功に役立ててみてください。

  • 築古物件の賃貸経営|メリットデメリットと成功ポイント5つ

    築古物件の賃貸経営|メリットデメリットと成功ポイント5つ

    築古物件は購入価格が安いため、高い利回りが期待できることはメリットですが、老朽化が進んでいるため修繕費がかかるなどのデメリットも併せ持ちます。今回は、築古物件で賃貸経営を考えている人に向けて、古い物件でも経営が成功するポイントを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

     

    オーナーのための家賃保証
    「家主ダイレクト」

    家主ダイレクトは、27万人を超えるオーナーに利用されている「オーナーが直接使える」家賃保証サービスです。

    • 賃貸経営をしているけど、なぜか手元にお金が残らない
    • 家賃の値下げはせず空室対策をしたい
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    「築古物件」とは

    築古物件とは、一般的には築年数が30年以上経った物件を指していますが、法的に決められた基準があるわけではありません。

    物件の種類によっては法定耐用年数で判断することがあり、たとえば築年数が25年の木造住宅だと、法定耐用年数が22年のために築古物件に該当することもあります。しかしこの判断の仕方の場合、同じ築年数25年でも鉄骨鉄筋コンクリート造りのマンションだと法定耐用年数が47年であるため、新しくはありませんが築古物件というほどではありません。

    築古物件は、建物自体はもちろん使用することができますが、内装や住設機器が老朽化しているために修繕やリフォームが必要となり、築年数が古くなるほどその費用はかかる傾向です。そのため、安い価格で販売されていても、修繕費を上乗せしたときに最終的な収支が高くなるというケースを想定しておくことが必要です。

    築古物件を賃貸経営するメリット

    不動産投資家の中には、築古物件を自ら選んで賃貸経営を行う人が少なくありません。では、あえて築古物件を選ぶことのメリットとは何でしょうか?築古物件で賃貸経営するメリットについて解説します。

    物件の価格が安い

    第1のメリットは、物件の価格が安いという点です。築古物件は老朽化で建物の資産価値が低いため、物件価格は通常よりも安くなる傾向にあります。中には、建物の資産価値はほぼゼロで、土地の価値しかない場合も少なくありません。したがって、資金力がそれほど豊富ではない人でも不動産投資にチャレンジできる可能性があるうえ、元々の価格が安いため、融資を受ける場合でも無理のない範囲で返済していくことができる可能性があります。

    高い利回りが期待できる可能性

    築古物件は物件価格の価値が低いために、表面利回りはそのぶん高くなる傾向にあります。物件価格が安いとしても、だからといって家賃を下げるのには限度があるため、購入価格が安いほど利回りは上がることになるからです。

    たとえば、首都圏にある新築の投資用マンション一棟の平均利回りは4%台ですが、築30年の中古マンションの平均利回りは6%程度です。新築マンションは資産価値が高いため物件価格は高く利回りは低めですが、築古物件は安く購入できるので利回りは比較的高いことが分かります。

    しかし、前章でもお伝えしましたが築古物件は老朽化が進むことにより修繕費がかかるケースが多いので、表面利回りだけでなく実質利回りを計算してから購入するのがおすすめです。なお、リフォームして魅力的な物件になると入居者が入りやすくなるため、長期的な視点で見ると収益を上げられるようになる可能性もあります。

    築古物件を賃貸経営するデメリット

    築古物件は利回りが高いなどのメリットもありますが、老朽化が進んでいることもあるためデメリットもいくつか存在します。ここでは、築古物件を賃貸経営するデメリットについて解説します。

    修繕費がかさむ

    第1のデメリットは、何といっても修繕費がかさむ点です。築古物件は築30年以上などと年数が経過しているため、建物本体がかなり老朽化しています。そのため、修繕する箇所が多く修繕費が高額になりやすいです。

    築古物件だと、外壁・給排水設備・住設機器などが劣化している場合が多くなり、たとえば、電気設備・給排水設備・衛生設備・ガス設備などといった屋内設備の法定耐用年数は15年となっています。きちんと修繕されていない物件を購入した後は、それなりの修繕コストを想定しておく必要があります。

    融資が難しい可能性

    第2のデメリットは、金融機関から融資を受ける際、審査に通るのが難しい可能性があることです。投資用不動産を購入する場合、一般的には金融機関のアパートローンなどを利用する場合が多いですが、築古物件を購入するとなると審査のハードルは高くなります。

    その理由としては、不動産投資ローンの審査基準はいくつかありますが、その中のひとつに「収益物件としての担保価値は十分か」という項目があります。融資を受けるのが収益物件であるため、当然ながらどのくらいの利益を上げられるのかが問われることになるうえ、返済が滞った場合に、貸金を回収するために担保物件としての価値を持つのかも審査されることになるからです。

    金融機関が物件の資産価値を調べる基準には、公示地価や路線価、固定資産税評価額などの評価がありますが、築古物件は建物の資産価値が低いため、新築物件のように担保価値は高くありません。それなので、貸したお金を回収する際に売却するとしても、年数が経過すればするほど担保価値はますます値下がりするうえに、買い手も見つかりにくくなってしまうのです。

    しかし、駅から徒歩10分以内などとアクセスの良い場所にある物件は土地の価値も評価に含まれるため、同じ築古物件であっても、なるべく立地条件の良い物件を購入するほうがおすすめであるといえます。

    耐震基準が万全ではないことも

    第3のデメリットは、耐震基準が万全ではないということです。昭和56年以前に建築された建物については、建築基準法に定める耐震基準が強化される前の「旧耐震基準」によって建築されており、耐震性が十分でないケースが少なくありません。築古物件は旧耐震基準の建物が多いため、購入価格は安く済んでも、高額な耐震工事を行う可能性が高いことを覚えておく必要があります。

    なお、耐震改修工事の費用は建物の構造・階数などによるため一概には言えないものの、たとえば6階建て以上の共同住宅で延べ面積が500~1,000平方メートルの場合、1,000~1,500万円程度を考えておく必要があります。

    また、地震保険には対象建物の免震・耐震性能に応じて保険料が割引になる制度がありますが、旧耐震基準のままである築古物件の場合だと、このようなメリットを受けることもできません。

    新築/築浅物件と築古物件、どちらが良い?

    ここまで読んできた人の中には、投資用不動産を購入するにあたり、新築/築浅物件と築古物件のどちらを選べば良いのか迷っている人もいるのではないでしょうか。新築/築浅物件にもメリット・デメリットがあるため、両者の違いを踏まえて自分に合う物件を選ぶことが必要です。

    以下の表は、新築/築浅物件のメリット・デメリットの比較を簡単にまとめたものです。

    新築/築浅物件のメリット 新築/築浅物件のデメリット
    建物がきれいで修繕費がかからない
    設備が充実していて入居者が入りやすい
    融資の審査が通りやすい
    建物の性能が高く耐震性や耐久性に優れている
    購入価格が高い
    固定資産税が高い
    節税効果が少ない
    築浅は家賃の下落幅が大きい

     
    新築/築浅物件は、建物が新しいため当面の修繕費はかかりませんが、そもそも購入価格が高額です。たとえば、東京23区内にある新築物件の中には、ゆうに1億円を超える価格のものも多く販売されており、当然ながら固定資産税や都市計画税なども高額になります。そのため、毎年の税負担が重くのしかかるというデメリットがあります。そのうえ減価償却期間が長いため、節税効果もそれほど期待できません。

    とはいえ、建物や設備が新しくきれいであるため、入居者が入りやすく安定した家賃収入を得られる可能性は高いといえます。建物の性能や耐震性、耐久性も高いため、地震などの災害が発生しても入居者に被害が及ぶのを防げることはメリットです。

    このように、新築/築浅物件も築古物件と同様にメリット・デメリットを併せ持つので、長期的な不動産経営を視野に入れながら自分に合った物件を選択していくことをおすすめします。

    ◆不動産投資の節税については、こちらの記事もぜひご覧ください。
    不動産投資の節税|効果が高い人と選ぶべき物件をチェック!

    築古物件の賃貸経営を成功させるポイント

    築古物件でも、オーナーの腕次第ではしっかりと利益を上げることが可能です。築古物件の賃貸経営を成功させるには以下のポイントがあげられます。

    ・購入前に物件を入念に確認しておく
    ・リフォームの知識を身につけておく
    ・物件エリアのリサーチや現地調査を行う
    ・どのくらい儲かるのかシミュレーションする
    ・客付けに強い管理会社を選ぶ

    ここではそれぞれのポイントについて詳しく解説します。

    購入前に物件を入念に確認しておく

    最初のポイントは、購入前に物件を入念に確認しておくことです。契約をした後に不具合が発生しないよう、事前に物件をくまなく調べておきましょう。不動産を購入するときには物件資料などで価格や写真をチェックしてから候補物件を選び出しますが、実際に現地を訪ねて自分の目で確認しないと物件の正しい情報をつかむことはできません。この際に物件で見るべきポイントには次のようなものがあります。

    1.柱の傾き
    2.耐震性
    3.基礎部分
    4.外壁の状態
    5.水道管の詰まり

    外壁にひび割れがないか、柱や床に傾きがないか、建物が雨に直接濡れる部分にコケやサビなどがないかなどをチェックします。外壁にひび割れがあると雨が入り込んでしまうため、鉄筋コンクリート造りのマンションでも鉄骨が腐食する事態になりかねません。

    特に築古物件は耐震性や建物の傾きを心配されることが多いので、きちんと耐震補強をしていない物件は極めて危ないといえます。2015年10月、横浜市の新築マンションでは、マンションを支える基礎杭が建物を支える固い地盤に達しておらず、新築にもかかわらず傾くという事件がありました。建物の傾きについては、築古・新築関係なく、できれば専門家に調査を依頼するのをおすすめします。

    また、水道管の詰まりなどといった給排水管の修繕は高額になりやすいので、購入する前にきちんと調べておくことも必要です。マンションの排水設備としては、トイレの排水をする汚水管、台所・浴室・洗面所などの生活排水用の雑排水管、屋根やベランダの雨水を流す雨水管、汚水処理施設である浄化槽などを確認しておきましょう。

    リフォーム・修繕の知識を身につけておく

    リフォームの知識を身につけておくとオーナー自身でも簡単な補修ができるようになるため、修繕コストを抑えることができます。近頃はDIY感覚で保有する物件の修繕を自分で行うオーナーが少なくありません。また、そのように自身で補修できるスキルを身につけると、リフォーム費用の相場が内容別にわかるようになるため、プロに修繕を依頼するときにも適正な価格で工事契約を結べる可能性が高くなります

    具体的にオーナーが知っておきたいリフォームや修繕の知識としては、以下のようなものがあげられます。

    ・壁紙の張り替え
    ・床材(フローリング・クッションフロア等)の張り替え
    ・トイレ、キッチン排水口の詰まり解消
    ・網戸の張り替え
    ・給湯器の水抜き
    ・コマパッキン、ケレップ(蛇口のパーツのひとつ)の交換

    壁紙や床材の張り替えは一見難しそうですが、近年ではユーチューブなどで施工方法を詳しく紹介している動画が多いため、気軽にチャレンジする人が増えています。おしゃれな壁紙もネットショップやホームセンターにはさまざまな種類が用意されているので、入居者が喜ぶようなセンスの良いお部屋に仕上げることができます。

    また、入居者からのクレームで特に目立つのは水回り関連のため、ちょっとした水回りのトラブルならば業者を呼ばずに直せるようになると良いでしょう。水は生活に欠かせない重要なものですので、少しでも使えない時間が発生すると入居者は困ってしまいます。

    たとえば、トイレやキッチンの詰まりなら、ラバーカップ(排水口などの詰まりを取る清掃用具)を使うと空気や水が無理やり排水管に流れて排水口からあふれなくなります。このような清掃用具はとりあえず応急処置をしたいときに便利ですので、水回りのちょっとした修繕の知識はぜひ身に着けておきましょう。

    物件エリアのリサーチや現地調査を行う

    購入を検討している物件エリアのリサーチや現地調査を行うことも重要です。収益性を高めるには、その物件の間取りが、該当するエリアにおいて需要があるかどうかを調べなくてはなりません。たとえばワンルームマンションに投資をするならば、単身者が通勤しやすい「駅近」「人口が多い」「ターミナル駅に近い」など、立地条件の良いエリアにある物件を選んだほうが集客しやすくなります。

    ファミリー向けのマンションであれば、3LDKなどと広さにも余裕があり、スーパー、小・中学校、保育園、病院など、子育てに適した住環境にある物件が最適です。このように、立地条件や間取り、広さ、周辺環境などによって入居者の属性が変わるため、どのような入居者をターゲット層とするのかを最初に決めておくことが肝心です。

    そして、ターゲット層に合った物件を見つけたら必ず現地調査を行い、購入を検討している物件の周辺環境をよく見ておきましょう。騒音や臭いなどは物件資料だけではわからないので、実際に現地で確認することが大切です。その際には、上の「購入前に物件を入念に確認しておく」の箇所でもお伝えしたとおり、建物の状態も調べておくために、できれば専門家と一緒に調査することをおすすめします。

    どのくらい儲かるのかシミュレーションする

    収益物件として活用するからには、実際にどのくらいの年間収益を上げられるのかをオーナーとして把握しておかなければなりません。

    入居者からもらう年間家賃収入から、賃貸経営に必要な経費などの支出を差し引くと、手元に現金がいくら残るかがわかります。シミュレーションするときは、表面利回りではなく、実質利回りで計算することが必要です。年間諸経費や購入時にかかった諸費用も算入して正確に計算していきます。実質利回りの計算式は以下のとおりです。

    (想定年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+購入時諸費用)×100

     
    実質利回りの場合、年間諸経費の細かな情報(印紙税等の各種税金、仲介手数料など)もすべて算入しなければならないため手間はかかります。しかし、実際に要した経費を算入するので、現実性のある収益金額を把握できるというメリットがあります。

    実質利回りを計算することにより、投資額に対してどれほどのリターンを得られるかを把握することができます。

    ◆表面利回りと実質利回りについては、こちらの記事もご覧ください。
    表面利回りと実質利回りの違い、計算方法、シミュレーション

    客付けに強い管理会社を選ぶ

    立地条件の良いエリアにある築浅の物件は人気が出やすいため、すぐに入居者が入りますが、築古物件の場合はそう簡単に入居者が見つからないことも少なくありません。収益を上げるには入居者に入ってもらわなければならないため、特に築古物件の場合は客付けに強い管理会社を選ぶことも重要です。

    客付けとは、入居者を探しているオーナーにお部屋を借りたい人を紹介することをいい、管理会社が入居者の募集から入居者審査、内見、契約と一連の流れを担当します。管理会社は客付けをしたら報酬としてオーナーから仲介手数料(家賃1カ月分が上限)を受け取り、入居者が入った後は家賃管理やクレーム、修繕の対応などをオーナーに代わって行います。

    客付けに強い管理会社の特徴として以下のようなものがあります。

    1.立地条件の良いエリアに店舗がある
    2.たくさんの物件を取り扱っている
    3.物件の写真が多い
    4.対応が早い
    5.地元の情報に詳しい

    これらの特徴があるのかをチェックして、管理会社を選びましょう。

    中には管理会社に依頼しないで自分で物件を管理しているオーナーも少なからず存在しますが、自主管理をする場合に気をつけたいのが家賃管理です。家賃の滞納が発生すると賃貸経営が上手く行かなくなってしまうため、事前に防いでおく必要があります。そこで、自主管理を考えているオーナーにおすすめなのが、家賃保証会社を活用することです。

    サービスの一例を紹介すると、株式会社Casaの「家主ダイレクト」は、自主管理オーナーの月々の管理コストを削減し、入居者募集のサポートを行うという特徴があり、入居中の賃料を100%保証しています。毎月月末には必ずオーナーの口座に入金されるので、キャッシュフローを安定させることができます。

    家主ダイレクトの保証費用は入居者が支払うため、オーナーは費用負担ゼロで利用することができます。家主ダイレクトを利用すると、オーナーは入居者の家賃だけでなく、更新料、退去時精算費用、早期解約違約金なども保証してもらうことができます。詳しい内容は以下の資料をご覧ください。

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    築古物件の賃貸経営を成功させるなら物件をよく知ろう

    築古物件は購入価格が安いため、資金力が豊富ではない人でも賃貸経営にチャレンジしやすいという面がありますが、老朽化による修繕費がかかるなど注意点も存在します。

    しかし、購入前に物件を詳しくリサーチしたり、収益をシミュレーションしたりして物件をよく知ることにより、投資に適しているかを判断することはできます。築古物件でも賃貸経営に成功する可能性はありますので、物件購入時には立地条件や建物の状態などをよく見極めるようにしてみてください。

  • 不動産投資のデッドクロス|原因と対応策、シミュレーション

    不動産投資のデッドクロス|原因と対応策、シミュレーション

    不動産投資では「税法上の利益」と「キャッシュフロー」が必ずしも一致するとはかぎらないため、「キャッシュがマイナスになっているにもかかわらず、税金を支払わなくてはならない」というケースが生じることがあります。このようなケースは不動産投資において「デッドクロス」と表現します。本記事では、デッドクロスが起こる状態と取るべき対策、有効に節税する方法などを紹介します。デッドクロスが生じた際のリスクを事前に知り、堅実な資金計画を立ててみてください。

     

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    不動産投資のデッドクロスとは

    不動産投資のデッドクロスとは、キャッシュがマイナスであるものの、税金を支払わなくてはならない状態をさしますが、なぜこのような状態が起こるのでしょうか?後ほど詳しく説明しますが、主な原因としては、減価償却期間とローンの返済期間がズレることにあります。

    税法上の利益と手元のキャッシュフローは同じではない

    不動産投資における税金は、不動産投資によって出た利益にかかるものであって、利益から支払うことを前提にしているはずです。ところが、税金の計算をするための損益計算において「経費として計上できる項目」は税法によって決められており、キャッシュアウトがあったとしても必ずしも経費として計上できないケースもあるのです。

    経費として計上するということは、そのぶん利益が少なくなるということですので、税金が少なくなるのを意味します。そのため、税金を減らしたければ計上できる経費はできるだけ多く計上すべきなのですが、何をどの期間に経費として計上すべきかの基準は税法で厳しく定められています。

    これによって、実際にキャッシュアウトがあったにもかかわらず経費として計上できない費目や、実際にキャッシュアウトがあった時期と経費として計上できるタイミングがズレる費目が生じます。

    キャッシュフローが滞れば「黒字倒産」という可能性も生じる

    「キャッシュがマイナスになっているにもかかわらず税金を支払わなくてはならない状態」とは、「税法上の損益計算では黒字になっている」ということです。しかし、キャッシュがマイナスになっているのであれば、現実には税金の支払いが難しくなります。

    キャッシュフローが滞ってしまい、税金やローンの支払いができなくなれば、「黒字倒産」と呼ばれる事態にも発展していくことになります。黒字倒産とは、利益の計算上は黒字であるにもかかわらず、手元にキャッシュがないためにキャッシュフローが滞ることで起こる倒産のことです。

    次章ではデッドクロスのシミュレーションを紹介し、その後の章からはデッドクロスを避ける方法、デッドクロスが発生した時の対処法、また、そもそもデッドクロスは避けなくてはならないものなのかについて詳しく説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

    ※投資用物件を全額キャッシュで購入しているケースでは、そもそもデッドクロスは問題にする必要がありません。それなので、本記事では物件購入に際してローンを利用しているということを想定して説明していきます。

     

    不動産投資|デッドクロスのシミュレーション

    デッドクロスの生じている状態は、計算の仕組みが複雑で少々理解が難しい点がありますので、イメージしやすいよう本章では具体的な数値を用いてシミュレーションしていきます。

    ここでは、居住用の新築木造アパートを1億円で購入したケースを想定します。不動産取得1年目と、取得から23年後に減価償却期間が経過した後のキャッシュフローの状態を比べて、どのように変化するか見てみましょう。

    アパート購入費用:1億円(土地5,000万円・建物5,000万円)
    ローン返済期間:35年(元利均等払い)
    金利:2%全期間固定
    家賃の表面利回り:5%
    居住用木造アパートの減価償却期間:22年
    (減価償却費の計算:5,000万円(建物の取得原価)÷22年=227万円)
    所得税:20%のケースを想定
    (不動産所得は他の所得と合算する総合課税なので、合計所得で税率が変わる)
    住民税:10%

     
    【アパート購入1年目】
    ➀税引き後利益

    家賃収入  :500万円
    △支払利息 :約200万円
    △減価償却費:約227万円
    税引き前利益:約73万円

    △所得税・住民税合計:約22万円
    税引き後利益    :約51万円

     
    ②キャッシュフロー計算

    家賃収入      :500万円
    △所得税・住民税合計:約22万円
    △ローン返済額   :約400万円(支払利息約200万円含む)
    キャッシュ残    :約78万円

     
    アパート購入1年目では、現実的なキャッシュアウトを伴わない減価償却費の約227万円を費用計上できるので、利益が少なくなり、それに基づいて計算する税金も少なくなります。ローン返済額のうち支払利息となる約200万円は経費として計上し利益から差し引けますが、元本の返済にあたる200万円の部分は利益からは差し引くことができません。

    最終的なキャッシュ残は、ローンの返済額と減価償却費の差額である27万円分が税引き後利益よりも多くなります。

    【アパート購入23年目】
    ➀税引き後利益

    家賃収入  :425万円(※15%ほど下落していると想定)
    △支払利息 :約100万円
    税引き前利益:約325万円

    △所得税・住民税合計:約98万円
    税引き後利益    :約227万円

     
    ②キャッシュフロー計算

    家賃収入      :425万円
    △所得税・住民税合計:約98万円
    △ローン返済額   :約400万円(支払利息約100万円含む)
    キャッシュ残    :△約73万円

     
    減価償却期間が終了した23年目には、家賃収入はある程度下落していると考えられますので、ここでは下落率を15%ほどに想定しました。

    ローンの返済が進み元本も減少しているため、返済額に占める利息の額も約100万円に減っています。さらに、前年まで計上していた減価償却費の計上ができなくなるので、税引き前利益は格段に上がり、税金の額も約98万円に増加します。税金計算上の利益は、家賃収入の減少にもかかわらず増加するのです。

    ところが、税法上、費用計上されなくてもローンの支払いは相変わらず続いています。家賃収入が減り税金が増加しているぶん、キャッシュフローは悪化しています。初年度には78万円のプラスだったキャッシュフローは、23年目には73万円のマイナスになってしまいます。

    このようなことが起こる原因や対策について、次章でもう少しく詳しく解説していきます。税法上の利益とキャッシュフローのズレはとても理解が難しいポイントではありますが、賃貸経営を行う上ではしっかり理解して対策を取ることが大事といえるでしょう。

    不動産投資|デッドクロスが発生する原因

    不動産投資のデッドクロスは、主に税法上の利益とキャッシュの動きが異なることから生じます。では、具体的にはどのような場合にこのような状態が生じるのでしょうか?以下に説明します。

    ローン返済が進むことで、経費にできる金利が減っていくため

    投資用不動産を購入する際には、ローンを利用して資金の借り入れを行うのが一般的だと考えられます。このローンの支払額の中には、利息に該当する部分と元本の返済に該当する部分が含まれていますが、税法上の利益の計算で経費として計上できるのは支払利息のみとなります。

    元本に該当する部分のうち建物の購入費用にあたる部分は、以下の減価償却という方法で費用化されていきますが、土地の購入費用に該当する部分は売却されるまで費用化されることはありません。

    また、支払利息についてはローンの返済期間中は経費として計上できますが、ローンの返済方法によって毎年の利息の額に違いが生じます。ローンの返済方法には「元金均等返済」という方法と、「元利均等返済」という方法の2つがあります。以下に違いを説明します。


    元金均等返済は、返済期間中に均等額の元金を返済する方法です。支払利息の額は元本に比例するので、元本の残金が大きい返済初期には利息の額が大きくなります。そのため、元金均等返済では返済初期のローンの合計返済額が大きくなり、返済が進むにつれて返済額が減少していきます。


    一方、元利均等返済は、元金と利息を合わせた返済金額が返済期間中において均等になるよう、毎回の返済額を設定する方法です。先ほどの元金均等返済は返済初期だと利息の額が大きくなると説明しましたが、元利均等返済の場合、毎回の返済額を均等にするために返済初期の支払額に占める元金の割合は少なくなります。その結果、元金均等返済に比べて元金の減り方が遅くなるため、返済期間を通して利息の負担も大きくなります。

    両者にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

    元金均等返済のメリットは、トータルでの支払い利息の額が元利均等返済に比べて少なくなる点、そして、返済期間が経過するにしたがって返済総額は減少していくため、リスク回避型の投資法に向いている点です。

    元利均等返済のメリットは、元金均等返済に比べて初期の返済総額が抑えられるので、不動産投資初期にキャッシュの余裕がなくても投資が可能になるという点です。

    どちらの支払い方法も、ローン返済が進むことで経費にできる金利が減っていき、ローンの支払額の中で経費として計上できない元本部分の割合が増えていきますので、デッドクロスを起こすリスクは高くなります。元金均等返済に比べると元利均等返済は元本が減少する速度がゆっくりですので、ローン返済が進んでも元本が残っている割合が高いぶん、元利均等返済のほうがよりデッドクロスを起こす確率は高いといえます。

    デッドクロスをできる限り避けるという観点からは、元金均等返済のほうが望ましいといえるでしょう。

    減価償却費がなくなることで、経費にできなくなるため

    不動産投資でデッドクロスが発生する一番大きな要因は減価償却費といえます。そこで、まずはこの減価償却費について説明していきます。

    減価償却費とは?

    減価償却費とは、建物や機械、備品など、一定額以上の高額な資産を購入した時に、その購入費用を取得した年度の費用として一括計上するのではなく、「それらの資産を利用することで効果を得ることができる」と考えられる期間にわたって費用計上していく仕組みです。

    減価償却を行う根拠の1つ目は、これらの資産を利用する効果は長期に及ぶため、効果が及んでいる利益と対応させて費用として計上しようという考え方です。2つ目は、これらの資産は利用することで時の経過とともに価値が減少していくので、減価償却費として費用計上したぶんをその資産の取得原価から控除し、資産の評価額を減価していこうという考え方です。

    なお、建物については減価償却を行いますが、土地は利用することで価値が減少することはないので、減価償却の対象にはなりません。そのため、ローンの元本に該当する部分のうち、建物の購入費用にあたる部分はこの減価償却という方法で費用化されていきますが、土地の購入費用に該当する部分は売却されるまで費用化されることはありません

    減価償却費の方法

    減価償却の具体的な方法についてですが、従来は定額法という方法と、定率法という方法の選択適用が認められていました。定額法とは、償却期間に渡って毎期均等額で償却していく方法です。定率法とは、前期末の減価償却残高に対して毎期一定率で償却していく方法です。

    定額法だと減価償却費は毎期均等額になりますが、定率法だと減価償却が進むにしたがって減っていく帳簿上の価格に同じ比率をかけて計算するので、減価償却費は年々少なくなっていきます。

    ただ、この減価償却費の計算法は近年たびたび法改正が行われているので、建物を取得した年度によって異なる計算法が用いられています。取得したのが平成10年4月1日以後であれば、建物の減価償却法は定額法のみとなります。

    さらに、平成19年4月1日を境に建物の定額法の計算方法が変更されています。従来の定額法では取得原価の1割は残存価格として減価償却の対象外でしたが、改正後は備忘記録として帳簿上に1円のみ残し、ほぼ全額を減価償却費として費用計上することになりました。

    たとえば、5,000万円の建物を20年の期間で減価償却すると、従来の定額法では【5,000万円×0.9÷20年=225万円】ですが、新しい方法では【5,000万円÷20年=250万円(最後の年だけ249万999円)】となります。

    また、減価償却を行う期間は耐用年数と呼ばれ、建物の構造や使用目的によって法定されています。参考までに代表的な例を以下に示しますが、詳しくは国税庁のホームページで確認してください。

    構造 用途 耐用年数
    木造造 住宅用・店舗用 22年
    事務所用 24年
    鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 住宅用 47年
    店舗用・病院用 39年
    事務所用 50年
    れんが造・石造・ブロック造 住宅用・店舗用 38年
    事務所用 41年

     
    詳しくはこちらの国税庁のホームページを参照してください。

    減価償却費とデッドクロスの関係

    建物の取得原価は、上記の方法で減価償却費として法定の耐用年数にわたり費用計上されます。

    しかし、現実的に建物を取得するためのキャッシュアウトが行われるのは、ローンの返済期間に渡ってであり、その支払額はローンの支払い条件に従って異なります。つまり、減価償却費の計上自体は現実的なキャッシュアウトを伴わないのです。反対に、ローンの支払利息は経費として計上できますが、ローンの元本部分はキャッシュアウトしても経費として計上することができません

    ローンを長期で組んだ場合、減価償却の期間はローンの返済前に終了することが多くなります。減価償却期間中は建物部分のローンの支払額よりも減価償却費の金額が多くなり、費用が多めに計上されるぶん、利益は少なくなって税金の支払いも少なく済みます。

    ところが、減価償却期間が過ぎると、ローンの支払いは残っているのに費用として計上できる減価償却費がなくなるので、「利益があって税金が発生しているが、ローンの支払いがあるために手元にキャッシュが残らない」という事態が発生してしまうのです。

    築年数とともに資産価値が下がり、家賃収入が減るため

    賃貸物件の建物は期間の経過とともに物理的に劣化していきます。随時リフォームなどでトレンドに合わせていかなければ、資産価値は下がり、家賃収入が減っていくのが通常です。経過年数が増えれば修繕費などの支出が増えて行きますし、家賃収入が減少していけば当然ながら利益は減っていきます。

    家賃収入の減少によってデッドクロスが生じるリスクは、税法上の利益とキャッシュフローのズレによって引き起こされるものではありません。しかし、計上できる経費が減少したとしても、収入が十分にあればデッドクロスが生じる可能性は少なくなります。そのため、デッドクロスを回避するには、長期にわたって十分な利回りが見込める物件へ投資することが重要だといえるでしょう。

    【物件購入前】デッドクロスの回避策

    では、デッドクロスはどのように回避すればよいのでしょうか?物件を購入する前にできる対策を紹介しましょう。

    物件購入時の自己資金額を増やす

    繰り返しとなりますが、デッドクロスとは費用計上できないローンの支払額が多額にあり、キャッシュフローはマイナスなのに税金の計算上は利益が出てしまい、税金の支払いが必要となっている状態です。

    この時、税金の支払いができなくなれば黒字倒産となってしまいますが、物件購入時の自己資金額を増やしてローンを組んでおけば、毎年の返済額の負担はそのぶん少なくなります。事前に負債を減らしておくことでキャッシュフローの安全性が高まり、デッドクロスに陥るリスクを減らすことが可能です。

    減価償却期間が長い物件を購入する

    減価償却期間は建物の構造や利用目的によって異なります。減価償却期間の長い物件を購入し、ローンの返済期間との落差をなくせば、デッドクロスは起こりにくくなると考えられます。

    「元金均等返済」を選択する

    上でも説明したように、デッドクロスに対する影響を考えると、ローンの支払い方法を選択する際には元金均等返済のほうが望ましいといえます。元金均等額返済ではローン返済期間を通じて元金の支払額が一定となりますが、元利均等返済は当初の利息の支払い比率が高くなりますので元本がなかなか減りません。そのぶん減価償却期間経過後に元本が残っている比率が高くなるため、元利均等返済よりも元金均等返済のほうが望ましいと考えられます。

    【物件購入後】デッドクロスの対応策

    物件を購入した後にできるデッドクロスへの対応策はあるのでしょうか?以下に解説していきます。

    資金を貯めておく

    物件購入時の自己資金額を増やすことでデッドクロスの回避が可能になるのと同様に、物件購入後も「デッドクロスに備えて資金を貯めておく」という方法があります。万が一、デッドクロスに陥り、税金の支払いが困難な状態になっても、十分な資金のプールがあれば慌てることはないでしょう。減価償却期間中はキャッシュアウトを伴わない費用計上ができるぶん、税金の節税効果が生じています。その間に余裕ができた部分はしっかりプールしておくことをおすすめします。

    ローンの借り換え、借入期間の延長

    ローンの借り換えをしてより低い金利のローンに乗りかえる、あるいは借入期間の延長をして月々のローンの返済額を減らす、という方法もあります。ローンの返済というキャッシュアウトが減れば月々の負担は減り、そのぶん手元にキャッシュが残るので、税金などの支払いに充てることができるようになります。

    繰り上げ返済をする

    ある程度の資金が溜まってキャッシュに余裕ができたら、タイミングを見て繰り上げ返済をするのも1つです。繰り上げ返済をすると、その後のローンの支払いが楽になりますし、そのぶん利息の負担も軽くなります。

    不動産投資|デッドクロスになった場合の対処法

    最後に、デッドクロスになった際の対処法を2つ紹介します。物件の状況や自分の投資方針によって、どのような方法が適しているか慎重に判断してみてください。

    不動産を売却する

    1つ目は、不動産を売却するという方法です。売却することで得た売却益で残りのローンを返済できれば、その後の税金の支払いは必要なくなります。

    ただし、不動産を売却して利益が生じた時には譲渡所得が発生しますので注意が必要です。不動産の譲渡所得は、「売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうか」で長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられます。

    長期譲渡所得であれば、所得税15%、住民税5%、所得税額の2.1%の復興特別所得税の合計で、20.315%の支払いとなります。しかし、短期譲渡所得の場合には、所得税30%、住民税9%、所得税額の2.1%の復興特別所得税の合計で、39.63%の支払いが必要となります。そのため、不動産の売却を検討する時には、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかに注意し、できれば5年経過後に売却することが望ましいといえます。

    【参考】不動産の売却益の計算で注意するポイント!
     
    不動産の売却益を計算する際に注意して欲しいのが、売却価格から差し引く不動産の購入原価は減価償却後の価格であるということです。

    不動産の売却益は、

    売却額-不動産の購入原価=不動産の売却益

     
    という計算式で計算します。この時に用いる「不動産の購入原価」というのは、不動産を購入した時の価格ではなく、毎年の減価償却費の累計額を差し引いたものとなります。ですから、減価償却期間経過後に売却する時には、建物の価値は1円となっているので、ほぼ土地代だけになっています。

    上の「不動産投資|デッドクロスのシミュレーション」の箇所で用いたサンプル例をもとに、23年経過後に8,000万円で売却できたと仮定した場合、
    8,000万円-5,001万円=約3,000万円
    となり、約3,000万円の売却益が生じることになります。

    8,000万円-1億円=△2,000万円
    となる訳ではありませんので、注意しましょう。

    不動産を追加で購入する

    もう1つの方法として、不動産を追加で購入するという方法もあります。新しく不動産を購入すれば、その不動産の減価償却費を経費として計上できるので、そのぶん課税される利益が減ることになります。

    ただし、この方法を行う場合には、追加で購入した不動産の減価償却期間が終了した時点で再度デッドクロスの問題が生じる可能性があることに注意しなければなりません。次々に不動産を購入していき事業を拡大するのか、長期的な経営戦力を考えていく必要があるでしょう。

    デッドクロスを利用した節税法

    減価償却期間の短い中古物件を購入して、短期間に多額の減価償却を行うことによって税金を圧縮し、長期譲渡所得となる5年経過後に売却するという節税スキームがあります。

    デッドクロスを恐れるよりも、「自分の投資手法にいかに利用するか?」という視点を持つことも大切かもしれません。詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。

    不動産投資の節税|効果が高い人と選ぶべき物件をチェック!

    不動産投資のデッドクロスの仕組みを理解してしっかり対策を

    キャッシュがマイナスになっているにもかかわらず税金を支払わなくてはならない状態が生じるデッドクロス。税法上の利益とキャッシュフローが一致しないために生じることは理解できましたでしょうか。

    不動産投資の仕組み的に、デッドクロスが生じるのはある程度は仕方のないことであるともいえます。それなので、デッドクロスがまったく生じないように対策を取ることよりも、事前にしっかりシミュレーションすることで、デッドクロスが生じても対応できるように備えておくことが大事ではないかと考えられます。

    そのためにも、少し難しい内容も含まれているかもしれませんが、ぜひこの記事を参考にしてデッドクロスの仕組みや対応策についての知識を身に付けてみてください。

  • 表面利回りと実質利回りの違い、計算方法、シミュレーション

    表面利回りと実質利回りの違い、計算方法、シミュレーション

    不動産投資を成功させるために必要な指標のひとつが、物件の「利回り」です。利回りとは収益率を指しており、利回りの数値が高いほど収益率が高いと一般的には捉えられています。この記事では物件の利回りについて詳しく解説をしますので、これから不動産投資を成功させたい人は参考にしてみてください。

     

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    不動産投資の利回りとは

    利回りとは、投資した金額に対して得られる見込み収益の割合のことで、物件を購入した費用に対して1年間の家賃収入がどのくらいの割合であるのかを把握することができます。利回りは「○○%以上」などというように、%(パーセント)で表すのが一般的です。「利回りの高さ=収益の高さ」であるため、数値が高いほど収益率は高いと判断されます。

    不動産投資で使用される利回りには、表面利回り(グロス利回り)と、実質利回り(ネット利回り)の2種類があります。表面利回りでは「シンプルに計算した大まかな収益率」が分かり、実質利回りでは「諸費用なども計算に入れた詳細な収益率」が分かります。

    冒頭でも述べたとおり、利回りは収益率の判断材料であるため、不動産投資を行う際には欠かせない重要な指標のひとつで、一般的には利回りの数値を参考にして不動産の購入を判断することになります。不動産投資においては、細かい諸経費を算入して計算する実質利回りのほうが、大まかに計算する表面利回りよりも実際に手元に残るキャッシュフローを正しく算出できると考えられています。

    表面利回りと実質利回りの違い、計算方法

    ここでは、表面利回りと実質利回りの詳しい説明や計算方法について解説します。

    表面利回り

    表面利回り(グロス)とは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割り戻した数値です。投資用物件の広告には表面利回りが使われていることが一般的ですが、その理由として、計算方法がシンプルであるだけでなく、毎年変動する媒介手数料や修繕費などの経費を算入することは不確定要素が高いということがあります。「表面利回り○○%」などと記載されており、不動産投資家が物件を購入する際の判断材料として使います。

    表面利回りの計算方法は以下の通りです。

    表面利回り=(年間の家賃収入)÷(物件価格)×100

     
    具体例として、年間の家賃収入が500万円、物件価格が5,000万円のケースで計算してみましょう。上記の計算式に当てはめて計算してみます。

    表面利回り=(500万円)÷(5,000万円)×100 
         = 10%

     
    したがって、この物件の表面利回りは10%ということになります。年間の家賃収入を物件価格で割るだけなのですぐに算出できるのがメリットです。大まかな収益率をすぐに知りたい場合に適しています。

    実質利回り

    実質利回り(ネット)とは、不動産投資の経営にかかる経費を考慮して計算した利回りです。 不動産経営には、購入時の諸費用のほかにも、税金や管理会社に支払う費用、各種手数料などさまざまな経費がかかります。実質利回りは実際にかかる必要経費を含んで計算するため、正確なキャッシュフローを把握するのに有効です。

    不動産経営には何かとランニングコストがかかるため、実質利回りの数字がわかっていないと、さまざまなマイナス要素が発生する恐れがあります。特に、物件を購入する時点で実質利回りを把握していないと、思っていたよりも利益が少ない、赤字になってしまうなど、不動産経営を続けていくうちに想定外のリスクに見舞われる可能性が考えられます。

    実質利回りの計算は、年間の家賃収入から固定資産税や管理費などを差し引いた金額を、購入時の物件価格に不動産取得税などの諸経費を合わせた金額で割ります。計算式にすると以下のようになります。

    実質利回り=(年間の家賃収入-年間の諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

     
    具体例として、表面利回りの例と同じ条件で「年間の家賃収入が500万円、物件価格が5,000万円」というケースで計算してみましょう。年間の諸経費は200万円、購入時の諸経費は150万円だと仮定し、上の計算式に当てはめてみます。

    実質利回り=(500万円-200万円)÷(5,000万円+150万円)×100 
         = 5.8%

     
    この通り、この物件の実質利回りは5.8%だと算出できます。表面利回りで計算したときには10%でしたが、実質利回りで計算してみると、4割ほど低い5.8%に下がりました。このように、実際にかかる諸経費を算入することにより、最終的な収益率には大幅に差異が生じる可能性があることには注意しなければなりません。

    上で紹介した実質利回りの計算式の中にある、「年間の諸経費」と「購入時の諸経費」についてそれぞれ解説していきます。

    年間の諸経費

    不動産投資においては、毎年、固定資産税や修繕費などのランニングコストがかかります。購入後にかかる主な税金・費用には以下のものが挙げられます。

    ・固定資産税
    ・都市計画税
    ・管理費
    ・修繕費
    ・修繕積立金
    ・水道光熱費
    ・火災保険料、地震保険料(年間単位で契約している場合)
    ・税理士などへの報酬費
    ・リフォーム費
    ・ハウスクリーニング費

     
    固定資産税は地価の高いエリアほど税額が高くなりますので、同じ広さの土地でもエリアによって税額には大きな開きがあります。また、管理会社に管理を委託する場合は毎月管理費が発生しますし、建物が傷んだり住設機器が故障したりした場合は修繕費も必要です。それとは別に、大規模修繕に備えて修繕積立金も毎月支払うことになります。

    ほかにも、建物の共用部分にかかる水道光熱費、火災保険料や地震保険料、経理業務を委託する税理士への報酬費、入居者が退去した後のリフォーム費用・ハウスクリーニング費用も必要な経費です。

    なお、物件価格や建物の築年数、グレードなどによって諸経費には違いがありますが、年間のランニングコストはかなり高額な金額になることを想定しておきましょう。物件の規模が大きくグレードが高いほどにランニングコストは上がる傾向があるので、家賃収入の金額だけでなく年間のランニングコストがどのくらいかかるのかも積算してから物件を購入する必要があります。

    購入時の諸経費

    不動産を購入する際には、物件価格以外にも、税金や手数料などとさまざまな費用が発生します。購入時にかかるおもな諸経費には以下が挙げられます。

    ・不動産取得税
    ・登録免許税
    ・収入印紙代
    ・固定資産税の清算(物件の引き渡し日までを日割り計算)
    ・不動産仲介手数料
    ・司法書士手数料
    ・ローン事務手数料
    ・ローン保証料
    ・団体信用生命保険料
    ・火災保険料(購入時に一括で最長10年間の補償などの場合)

     
    不動産を取得するには、不動産取得税・登録免許税・印紙税などの税金がかかります。

    また、固定資産税は「物件が引き渡された日」を起算日として売主との間で清算するのが一般的です。なぜならば、固定資産税は毎年1月1日時点で物件を所有する人が支払う義務をもつので、その年における所有日数が少ないと売主は損をすることになってしまうからです。税の負担を公平化するため、売主と買主との間で所有日数に応じて負担します。

    不動産を仲介した不動産会社に支払う仲介手数料も必要な経費です。400万円以上の不動産を購入した場合は、取引額の3%以内(税別)を支払います。不動産の所有者を変更する際は、権利関係を明確にするために登記を行います。この場合、登記のプロである司法書士に支払う手数料が発生します。

    そのほか、ローン事務手数料、ローン保証料、団体信用生命保険料、火災保険料なども購入時に支払う必要があります。

    表面利回りと実質利回りのシミュレーション

    実際に不動産投資を行う際には、あらかじめ綿密にシミュレーションをしておくことが肝心です。ここでは「都心の物件」と「地方の物件」に分けて、表面利回りと実質利回りをシミュレーションしてみましょう。

    物件1:都心の一棟マンションのシミュレーション

    1つ目の例として、都心にある一棟マンションのシミュレーションをしてみます。次の条件の物件を購入するとします。

    物件:新築の一棟マンション
    立地:東京都文京区(東京メトロ有楽町線/護国寺駅 徒歩3分)
    物件価格:3億円

    年間家賃収入:1,500万円(月々125万円×12カ月)
    物件購入時の経費:3,000万円
       (仲介手数料・不動産取得税など取得に関わる各種税金・火災保険料など)
    年間運営経費:180万円
       (管理費・修繕積立金・固定資産税・その他諸経費)

    ※計算を簡単にするため、物件購入時の経費、年間運営経費は各種経費を合算しています

     
    表面利回りを算出してみましょう。

    (125万円 × 12カ月)÷ 3億円 × 100 = 5%

     
    表面利回りで計算すると、利回りは5%となりました。次は実質利回りで計算してみます。

    (125万円 × 12カ月180万円 ― 180万円)÷(3億円 + 3,000万円)= 4%

     
    実質利回りで計算すると利回りは4%となり、表面利回りで計算したときよりも1%低い数値が算出されました。このように、不動産投資にかかる諸経費を算入して計算すると、実際に手元に残るキャッシュフローを割り出せるようになります。

    物件2:地方の中古一棟アパートのシミュレーション

    2つ目の例として、地方の中古一棟アパートの利回りをシミュレーションしてみましょう。以下の条件の物件を購入するとします。

    物件:中古一棟アパート
    立地:茨城県鹿島市(JR鹿島線鹿島神宮駅 徒歩30分)
    物件価格:1,200万円

    年間家賃収入:150万円(月々12万5,000円×12カ月)
    物件購入時の経費:120万円
       (仲介手数料・不動産取得税など取得に関わる各種税金・火災保険料など)
    年間運営経費:18万円
       (管理費・修繕積立金・固定資産税・その他諸経費)

    ※計算を簡単にするため、物件購入時の経費、年間運営経費は各種経費を合算しています

     
    表面利回りを算出してみましょう。

    (12万5,000円 × 12カ月)÷ 1,200万円 × 100 = 12.5%

     
    表面利回りで計算すると、利回りは12.5%になりました。続いて実質利回りで計算します。

    (12万5,000円 × 12カ月 ― 18万円)÷(1,200万円 + 120万円)= 10%

     
    実質利回りは10%となり、表面利回りで計算したときよりも2.5%低い数値になりました。

    以上、2つの物件例をもとにシミュレーションしましたが、ここで重要なのは「利回りの数値だけで物件購入を判断しないこと」です。物件1の「都心の一棟マンション」の利回りは4%とあまり高くないように感じられるかもしれませんが、東京都文京区という立地条件の良いエリアにある点、東京メトロ有楽町線の護国寺駅から徒歩3分である点は投資物件として大きな魅力です。物件価格は3億円とかなり高額ですが、「都心+駅近+新築」という3大メリットがある物件ですので、満室経営で着実な利益を上げられる可能性は高くなるといえます。

    一方、物件2の「地方の中古一棟アパート」は、物件価格が1,200万円と、1棟建てのアパートにしては比較的お手頃価格に感じられます。そのうえ、物件の実質利回りは10%と高い数値となっていますので、魅力的な物件に映るかもしれません。

    しかし、収益率をそのまま鵜吞みにするわけにはいきません。なぜならば、「地方+駅から遠い+中古」という物件は、入居者が入りにくい傾向があるからです。特に駅からのアクセスが悪いというのはかなり不利となります。利回りは「満室時の家賃収入」で計算するため、いくら数値が高くても、実際に空室が目立つ物件では赤字経営になる可能性が少なくありません。詳しくは次章で紹介しますが、物件を購入する際には、実際にどのくらいの利益を上げられるのかについて詳細に調べる必要があります。

    利回りが高くても注意すべき物件

    不動産投資を行う際には、その物件が実際にどのくらいの収益をあげられるのかを把握しておくことは肝心なポイントです。繰り返しとなりますが、実質利回りを計算すると物件の収益力が明確になるため、キャッシュフローを把握できるようになります。つまり、実質利回りを調べることは「物件の本当の収益力」を計るのに有効な手段だといえます。

    物件価格が手頃でも、購入後に管理費や修繕費などが高くつく物件では、ランニングコストや経費が高くなり、全体的な収支で見るとそれほど利益を得られないケースが少なくありません。購入価格も重要ですが、購入した後にかかるコストも考慮して物件を取得するようにしましょう。その見極めが十分でないと赤字経営に陥ってしまう可能性も考えられます。

    利回りが高いけれども購入は慎重になるべき物件の特徴を以下の表にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

    物件の特徴 避けるべき理由
    旧耐震基準の物件 ・地震での倒壊リスクが比較的高い
    ・リニューアル工事費用が高額になる
    ・耐震補強工事を実施する必要が出てくる
    ・保険料が割高になる
    出口戦略が難しい物件 ・買い手がつきにくい
    ・老朽化が進むと維持管理費が増えていく
    ・最終的に赤字になってしまう
    借地権物件 ・銀行の融資審査が通りにくい
    ・地代を払い続けなくてはならない
    ・売却をする際に地主の許可がいる
    管理状態が悪い物件 ・建物が傷みやすくなるのでリフォーム費がかさむ
    ・住環境が悪くなり入居者が不快な気分になる可能性
    ・空室率が高くなる可能性
    立地条件が悪い物件 ・駅から遠いと入居者が入りにくい
    ・川沿いにある場合は水害のリスクが高まる

    物件購入後に利回りを上げるには?

    立地条件や建物のグレードなどを後から変えることはできませんので、物件の利回りは物件を購入する時点である程度決まってきます。しかし、不動産投資を始めたいからといって、都心にある数億円のマンションを購入できる人ばかりではありません。最初は自分にとって無理のない価格の物件から不動産投資をスタートさせるのが無難です。そこで本章では、物件購入後に少しでも利回り改善を期待できる方法についていくつか紹介します。

    リフォームをする

    部屋の内装や住設機器をきれいにすると、入居者が決まる可能性が高くなります。そのため、まずは居室のリフォームを検討することをおすすめします。近年はインターネットで空室を検索する入居者希望者が増えていますから、入居者からの人気が高い「宅配ボックス」「無料Wi-Fi」などの設備を整えるのもよいでしょう。そのほかにも、「ドアチャイムをテレビインターホンに変える」「トイレをウォシュレットにする」など、住設機器に付加価値を与えると入居者に喜ばれます。

    広告を出す

    ターゲット層に合わせて広告を出すことも有効です。たとえば、単身者向けのワンルームマンションならば、スマートフォンで見られるインターネット広告を活用するとよいでしょう。ファミリー向けのマンションならば、インターネット広告にプラスして、チラシなどといった紙媒体の広告を出すのも一案です。その際には、居住エリアを絞り込んで配布するようにしましょう。

    入居者の費用負担を減らす

    引っ越しには何かと費用がかかり、引っ越し代や入居する物件の初期費用など、まとまったお金が必要となります。そのため、なかなか空室が埋まらない場合には「入居者の費用負担を減らす」というのも良い方法です。たとえば、入居する際の敷金・礼金などを無料とします。

    また、「フリーレント」を導入して、1カ月~2カ月など、一定期間の家賃を無料にするのも良い方法です。立地条件が良くないなど、空室が目立つ物件では、更新する際の更新費用を安くするなどの方法もあります。費用負担が少ない場合、いったん入居すればそのまま住み続けてくれる可能性が高まります。

    表面利回り・実質利回りを活用して不動産投資を成功させよう

    不動産投資が成功するかどうかは、物件を購入する時点でほぼ決まっているといっても過言ではないでしょう。立地条件が良い・駅から徒歩圏内・建物の状況も良い物件ならば、入居者が入りやすいうえに入居期間も長くなる傾向が高いため、安定した不動産経営が行える可能性があります。

    なお、物件を購入した後、思いのほか空室率が高いという問題が発生した場合は、リフォームを行ったり、適切な営業活動を行ったりすることで改善する場合もあります。とはいえ、最初から黒字経営を目指せるほどの収益が見込める物件を選ぶことが何より重要です。これから不動産投資を成功させたい人は、物件の実質利回りを見極めてから購入するようにしましょう。